【安田記念】福永祐一調教師、G1初勝利へ「馬優先」主義貫き異例の美浦滞在 自ら手綱執った復活期す5歳馬

福永師が手綱を執って追い切ったダノンスコーピオン(カメラ・荒牧 徹)
福永師が手綱を執って追い切ったダノンスコーピオン(カメラ・荒牧 徹)

◆第74回安田記念・G1(6月2日、東京競馬場・芝1600メートル)追い切り=5月30日、東京競馬場

 第74回安田記念・G1(6月2日、東京)の出走馬が30日確定。前走後から美浦滞在しているダノンスコーピオンが追い切られ、「馬優先」を貫いて異例の選択をした福永祐一調教師(47)=栗東=は好仕上がりを確認した。枠順はきょう確定する。

 “福永流”で完全復活ののろしを上げた。前走の京王杯SC4着後、異例の美浦滞在で調整するダノンスコーピオンはWコースを単走。福永調教師自らが手綱を執りゆったりと駆け出した。序盤から躍動感のある走りで最後の直線へ。外ラチ沿いへと進路を取ると、馬なりのままラスト1ハロンでグンとギアを上げて鋭くフィニッシュ。

 しまい重点ながら今週の2位となる10秒8と出色の伸び脚を披露した。トレーナーは「あんなペースアップして、あんな頭の位置で走れる馬じゃなかった。前走までの動きの質とは全く異なるもの。クオリティーが上がっていた」と、良化ぶりを整然と説明した。

 栗東滞在に比べて美浦滞在は例が少ないが、あくまで厩舎の方針に掲げる「馬優先」主義を貫いてのことだ。同馬は22年のNHKマイルCを制して以降勝ち星がなく、昨年は2ケタ着順が続く不振にあえいでいた。ところが、転厩初戦となった京王杯SCは、出遅れて厳しい立ち回りを強いられながらも4着。手元において立て直し、久々にG1ホースらしさを見せた。そこから中2週の調整となる今回、福永師は「性格と今までの経験を踏まえて、一頭でもそれほど大きなストレスはないだろうと考慮して」レース後には輸送の負担が少ない美浦での調整を決断した。

 効果は追い切りで現れた。「どうしても栗東だと再度の輸送を考慮してソフトな仕上げにせざるを得ない。そういう意味でも、今日(しっかり)やれるというメリットがある。美浦滞在にして良かった」。開業して約3か月。2度目のG1挑戦を前に簡単な決断ではなかったはずだが、経験豊富なスタッフを信頼し、選択が間違いではなかったことを確認した。

 見据えるのはレース本番。「今日がめちゃめちゃ良かったらピークアウトしちゃう。これでいい具合で行けそう」。馬を最優先し絶妙なさじ加減で仕上げられた実績馬の復活ロードの先に、福永厩舎初のG1獲得もある。(石行 佑介)

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