この秋も私とゆかりが深いG1について、書くことになりました。引き続き、お付き合いいただければと思います。
安田厩舎はよく「短距離王国」と言われました。突出した得意分野を持ち、皆さんから注目を集める。それは私にとって誇りでした。礎となった時期がスプリンターズSを3連覇した2011~13年です。多くのスピードに秀でた馬が集まり、結果を出してくれたことで、馬主さんから良質な短距離馬を任される機会がグッと増えました。特に11年のカレンチャン、12年のロードカナロアはここがG1初制覇。「短距離王国」の名がつくきっかけになった思い出深いレースです。
ロードカナロアは12、13年と連覇しました。古馬になってからは6ハロンで圧倒的な強さを見せましたが、暑さにだけは本当に弱かった。夏場は活気がなく、いい走りができないのです。だから、2年とも始動戦のセントウルSは2着。ここを使うことで、ガラッと体調が上向くんですよね。
12年は直線で先頭に立ったカレンチャンを残り100メートルでとらえ、一気に突き放す強い競馬。カレンチャンも2着に残り、初めてG1でワンツーを決めた喜びは今もよく覚えています。13年は心身両面、レースぶりが完成の域。単勝1・3倍と圧倒的な人気でしたが、安心して見ることができました。引退後も種牡馬として、次々といい子を送り出し、本当に頭が下がる思いです。
今年は2頭に注目しており、まずはママコチャです。叩き良化型だと思っていたのですが、爪を傷めたため間隔が空いたと聞いていた前走がいい内容の2着。セントウルS2着はカナロアと同じ。こちらも一回使ったことで、グンと上向くんじゃないかと思っています。
もう1頭はサトノレーヴです。今年の春から夏にかけ、重賞連勝を含む走りは目を見張るものがあります。この馬はカナロアの子供なんですよね。前走時で548キロですが、シルエットなんかは父にすごく似ています。そのあたりにも期待ですね。
相手は前走の末脚が強烈だったオオバンブルマイ、前走の内容が優秀なトウシンマカオに魅力を感じます。(JRA元調教師=不定期掲載)