◆第69回有馬記念・G1(12月22日、中山・芝2500メートル)
中央競馬の総決算、第69回有馬記念・G1は22日、中山競馬場で行われる。ファン投票歴代トップの47万8415票を集めたドウデュースが、史上5頭目の連覇、史上3頭目の同一年秋古馬3冠完全制覇をかけて挑む一戦だ。今年の主役に関わる人々を取り上げるカウントダウン連載「ザ・ファイナル」をスタート。初回は主戦の武豊騎手(55)=栗東・フリー=がラストランに懸ける思いを激白した。
壮大な物語が今、クライマックスを迎えようとしている。史上3頭目の秋古馬3冠、連覇、そしてラストランでの勝利。様々な記録と栄誉をかけて、武豊はドウデュースの手綱を執る。「(一緒に)長くやってきたけど、言ってももう最後だからね。最後、いい締めくくりしたいよな」。後悔は、残したくない。
欧州G1馬が3頭参戦したジャパンCでは日本総大将の威厳を証明。東京では異例の、4コーナーからのまくりで全馬をねじ伏せた。「外を回って最後までもつ。もう、信用しようと思った」。ロングスパートを引き出せたのは、相棒の力に疑いがなかったから。それでも「ジャパンCだからね。すごい馬たちが上がりの脚を使ってるところに、それを外から(差した)。応えてくれたね」とうなるほどの完勝だった。
武豊がほれ込むのは、ドウデュースの“瞬間最大風速”。「一瞬の脚は本当にすごい。一気にトップスピードに入る馬はなかなかいないね」。最高速度そのものはもちろん、そこに到達するまでの加速、そして持続力。「ディープインパクトとはストライドは違うけど、スピード乗ったときの、ぶれのなさは似てる。グン、ときたときのすごみは似てる。他の馬にない感じ」。歴史的な名馬とも双璧をなす。
2歳から4年連続でG1を勝てたのは「チーム・ドウデュース」の絆がなせる技。武豊は「4年間ずっと高いレベルで活躍できるって、よっぽどいいスタッフじゃないと無理やで」と熱を込める。連勝街道にはほど遠く、海外遠征では大敗や出走取消と、辛酸もなめてきた。「そのままずるずるいかないもんね。厩舎、育成場のスタッフ力は感じるよ」とたたえる。
だからこそ、武豊は厩舎サイドに対して、調教に関する要求をしたことがない。逆もしかり。友道調教師からも、競馬について指示を受けたことは全くない。「みんながプロで、いい仕事ができてると思う。お互いを尊重している」。強固な信頼関係を築き上げてきた。
レジェンドはこれまで有馬記念で最多タイの4勝。昨年のドウデュースを除けば、オグリキャップ(90年)、ディープインパクト(06年)、キタサンブラック(17年)と全て引退レースだった。「俺も強い馬で勝てた。最後、飾りたいよな、有終の美を。(ドウデュースは)今が一番いい。乗ってても強さを感じる」と勇み立つ武豊。勝利のフィナーレで、ドラマにあふれた3年3か月を締めくくる。(水納 愛美)
◆ディープインパクトとドウデュースの末脚 ディープインパクトは計測のない06年凱旋門賞を除き、国内全13戦で上がり3ハロン(600メートル)最速だった。ドウデュースは国内全13戦で、昨年の天皇賞・秋以外は1位7回、2位4回、3位1回(タイ含む)。2走前の天皇賞・秋はG1勝利馬史上最速の32秒5を叩き出した。前走のジャパンCでは、レースの上がり33秒4を大きく上回る、32秒7を記録した。