災い転じて福となす―。デビュー4年目の坂井瑠星騎手(22)=栗東・矢作厩舎=は、6月30日の函館4Rで落馬負傷して、左頬骨と胸骨を骨折。今週の復帰まで約1か月を要したが、競馬に乗れない時間を無駄にせず、7月下旬に英国へ渡って本場の競馬を学んできた。
今週末に世界の名手が腕を競うシャーガーCに初参戦する藤田菜七子騎手の同期で、17年11月から豪州に単身渡り、約1年間の武者修業を経験してきた若手の有望株だ。7月11日に落馬で負傷した患部の手術を受け、歩行など日常生活には支障が無かったため、約10日間でいくつもの競馬場や、ゴドルフィン、名門マイケル・スタウト厩舎などの調教施設を見学した。「多少は英語もできるので、行きやすかったのはあります。矢作先生に相談したら、『すぐ行ってこい』と理解していただけたのが一番でした」と、背中を押してもらった師匠に感謝する。
日本からシュヴァルグランが参戦し、世界最強牝馬のエネイブルが制した“キングジョージ”を生観戦する機会にも恵まれた。「いい刺激になりましたし、いつかあの舞台で乗りたい気持ちが出てきた。世界のトップジョッキーが集まる舞台ですから。なかなかイギリスとか行ける機会はないので、いい休みとしてプラスにとらえたい」と大きな糧となった。
今週のエルムSは自厩舎のドリームキラリと挑む。斤量59キロで2着に好走した前走の欅Sは、「のちの重賞ウィナー(プロキオンS勝ちのアルクトス)に鼻差でしたからね」と力を認めている。意識の高いホープから目が離せない。(坂本 達洋)
◆坂井 瑠星(さかい・りゅうせい)1997年5月31日、東京都生まれ。22歳。栗東・矢作芳人厩舎所属。16年3月5日にデビューし、同4月2日に初勝利。17年11月からオーストラリアで約1年間の海外修業。昨年のコーフィールドC(ソールインパクト)で国内外G1初騎乗。今年の報知杯フィリーズレビュー(ノーワン)で同着での重賞初制覇を果たす。JRA通算85勝。167・5センチ、44・3キロ。血液型O。
<エルムSで騎乗ドリームキラリ、3度目の正直だ>
過去2年は3、2着と好走しており、得意の舞台で重賞初制覇を狙う。全休日明けは、角馬場からダートコースをキャンターで約2周して調整。広岡助手は「昨年と比べると状態はひと息だが、気持ちで走るところがあるし、追い切りでビシッとやってもらって、どこまで状態が上がるか」と、地力に期待する。(札幌)