【日本ダービー 武史の挑戦1】競馬学校1年目は「馬に走られていた」146センチの少年

14年4月、競馬学校入学時の横山武(右)と父・典弘
14年4月、競馬学校入学時の横山武(右)と父・典弘

◆第88回日本ダービー・G1(5月30日・芝2400メートル、東京競馬場)

 戦後最年少ダービー騎手の記録がかかるエフフォーリアの横山武史騎手(22)=美浦・鈴木伸厩舎=にスポットを当てた連載「武史の挑戦」を5回にわたってお届けする。

 2014年初冬のJRA競馬学校(千葉県白井市)。1400メートルのダートコースでは騎手課程33期生(入学1年目)の走路騎乗が行われていた。かかり気味の馬が一頭。馬上には手綱を引いて必死に馬を制御しようとする146・7センチ、34・1キロの少年がいた。「また、あいつ馬に走られているな」と見守る教官。またがっていたのは15歳の横山武史だった。

 競馬学校史上、まれにみるほど背が低く、しかも軽量。入学試験では「体が小さすぎて、もう1年待たせた方がいいんじゃないかという意見もあった」と伯父でもある横山賀一(よしかず)教官(54)は振り返る。入学後は食事量を増やす提案もされたが、「自分の容量以上に食べるとおなかを壊して食べる前より体重が減ることもあった」(横山教官)。周囲の心配の声も絶えなかった。

 基礎乗馬を半年こなした後には走路で1ハロン(200メートル)の歩数(目安は35歩で15秒)を数えてスピード感覚を養う訓練があった。小柄でパワーがないため馬の制御に手間取り、「指定タイムよりいつも速くなってました」と小林淳一教官(48)は回想した。同期で唯一乗馬未経験の富田暁騎手(24)=栗東・木原厩舎=は「馬乗りに関しての成績は『武史6位、僕7位』でした」と振り返る。教官付き添いの下、富田と2人による居残りでの筋トレが日課。天井からぶらさがった綱を何度も一人で上った。日々の積み重ねで、身長も卒業する前には160センチ近くに。パワーも自然とついてきた。

 最終年(3年目)の模擬レースは10戦中3勝で総合V。16年11月の競馬開催日に東京競馬場で行われた同レース(芝1400メートル)ではエクスペリエンスに騎乗し、父・典弘の見守る前で勝った。楽しいが、苦しくもあった競馬学校の3年間を経て、騎手免許を取得した。(特別取材班)=つづく=

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