【ブリーダーズC ヤマタケが見た】西海岸開催に照準 矢作調教師の超現実主義でつかんだ歴史的2勝

ラヴズオンリーユーの表彰式後に笑顔を見せる矢作調教師(左から2人目)
ラヴズオンリーユーの表彰式後に笑顔を見せる矢作調教師(左から2人目)

 米国競馬の祭典、ブリーダーズCはデルマー競馬場で行われ、6日(日本時間7日)に閉幕した。芝の女王決定戦、フィリー&メアターフ(芝2200メートル)で、ラヴズオンリーユーが日本調教馬のBC初制覇を達成すれば、その2時間後に同厩舎のマルシュロレーヌがディスタフ(ダート1800メートル)で砂の世界女王の座を射止める快挙。一日でBC2勝の離れ業をやってのけた矢作芳人調教師(60)の“世界戦略”に、ヤマタケ(山本武志記者)がコラム「見た」で迫った。

 思わずニヤリとしてしまった。マルシュロレーヌが人気薄で勝った直後のインタビュー。笑顔の矢作調教師の発した言葉は「何で馬鹿にされているのかなと思っていた」。今や日本競馬で確固たる地位を築いているが、もともとは「逆境でこそ燃えるタイプ」と自己分析する。海外遠征は本来のチャレンジ精神が体現される場で、その達成感を“らしい”言葉で伝えたのがうれしかった。

 もう10年以上前だと思う。雑談中に「次はセントジェームズパレスS(欧州の3歳牡馬マイル王決定戦)みたいなことを普通に言える厩舎にしたい」と聞いた。ラヴズオンリーユーの今回の遠征プランを最初に取材した5月上旬。最後に「その後は香港への転戦を考えています」と本当に“普通に”話した時は驚いた。マルシュロレーヌは今年のJBCレディスクラシックが1500メートルと適距離外だったため、切り替えた先のターゲットが何とアメリカ。当時は夢物語のように感じていた言葉が今、徐々に現実へ近づきつつある。

 持論がある。「日本馬がこれだけ海外に行けるようになったからこそ、レースを選ぶべきだと思う。相手関係や適性など色々と考えていかないといけない」。ブリーダーズCを狙うのは日本から近い西海岸開催の時というのは開業以来、言い続けてきた。マルシュロレーヌの本場のダートへの投入も芝で勝つようなスピードがあるからこそ。常に現実主義で勝負に向き合う。だからこそ、「勝ちたい」と強い思いを持つ凱旋門賞には今まで一頭も送り出してはいない。

 その考えはいつも世界の番組など海外の情報に目を通しているからこそ。失礼ながら、それは趣味か仕事か、と聞いたことがある。「そこまで暇じゃないぞ。仕事だと思わないとな。ただ、好きなことは頭に入って、残っているもの。何でもそうだろ」。やはり、矢作芳人は生粋のホースマンなのである。(山本 武志)

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