最後の時間を、存分にかみしめた。この日のメインが、デビュー28年目の福永にとって通算1588度目、そして小倉での最後のレースだった。「小倉に来て良かったです」。12R終了後に行われたセレモニーで感慨深げに語った。
8鞍騎乗して2、6Rで2勝。2着だった1、7Rはともに武豊に先着を許した。「ユタカさんと接戦が多くて、すごく楽しかったです。ユタカさんの姿に憧れてこの世界に入ったということもありますし、いい思い出になりました」と、名手との競演を満喫した。
デビューから10年ほど、夏は長期滞在が当たり前だった。所属した北橋厩舎や主戦を務めた瀬戸口厩舎の馬が滞在してレースに臨むのに合わせ、週中の調整をこなすため、自身も夏の間は小倉に腰を据えた。「小倉は僕にとって青春でした」と思いをあふれさせた。
セレモニーを終え、温かい拍手を送るファンに向け、福永は笑顔で手を振って応えた。「今思い返しても、本当にいい思い出ばかり」。若手時代に汗を流した地での騎手ラストデーを晴れやかな表情で締めくくった。
〈北橋元調教師「良かったね」〉 ○…福永の師匠で、小倉在住の北橋修二元調教師が、小倉競馬場を訪れた。口取り式や、最終騎乗セレモニーにも出席。「(福永が)たくさんのファンに囲まれてうれしい」と愛弟子の立派な姿に目を細めた。「無事に騎手をやめるということは、お父さんとお母さんにとって一番良かったね」と、新たな門出も祝福した。