◆第83回皐月賞・G1(4月16日、中山競馬場・芝2000メートル)枠順決定=4月13日、栗東トレセン
生粋のホースマンだからこそ重みが分かる。ダノンタッチダウンを送り出す安田隆調教師は騎手時代に91年のトウカイテイオーで皐月賞、ダービーを制したが、調教師ではクラシックのタイトルを手にしていない。今まで桜花賞で2度の2着【注】が最高。「馬にとって、一生に一度の舞台ですから。やはり、クラシックは特別です。1着で勝ちたい。2着では意味がない。それぐらい違います」と力を込める。
最後の挑戦だ。JRA・G114勝を挙げる名トレーナーも来年2月末で定年引退。中学を卒業した68年に飛び込み、半世紀以上も過ごした競馬の世界ともうすぐ別れを告げる。「最後の年に勝つことができれば、ドラマになるんじゃないかなと思っているんですよ」。昨年までマイルしか使っていなかった愛馬をここから始動させたのも「次のダービーも考えてのことです」と説明する。
父は自らが手がけ、今や日本を代表する種牡馬のロードカナロア。以前は代表産駒のアーモンドアイの活躍を、まるで管理馬のように喜ぶなど思い入れは誰よりも深い。ラストイヤーの最近、よく口にする言葉がある。「カナロアの子供で100勝したいんです」。現在は調教師別では他を圧倒する92勝。悲願をかなえる勝利は、大目標への大きな一歩にもつながる。
そして、馬上にはデビュー時に厩舎所属だった川田。20年のホープフルSでは半兄のダノンザキッドで師弟でのG1初制覇を果たし、涙の川田を笑顔で出迎えた。「(今回も)弟子で縁があったんでしょうね。距離は分かりませんが、今までのマイルでは折り合いの心配は全くありません。ゴールをトップでタッチダウンしてくれてたらいいですね」。様々な縁がつながり、たどり着いた大舞台。強い思いが夢を現実へと変える。(山本 武志)
【注】安田隆調教師のクラシックでの今までの最高は01年桜花賞(ムーンライトタンゴ)と13年桜花賞(レッドオーヴァル)の2着。