2000、01年のG1で初挑戦から5戦続けてテイエムオペラオーに敗れ、6度目の対決となった01年宝塚記念で悲願の逆転Vを成し遂げたメイショウドトウ(セン27歳)が今、再び脚光を浴びている。余生を送る養老牧場ノーザンレイクで猫の「メト」と相棒のように仲良くする様子が広く反響を呼び、引退から21年を経て人気が再燃している。
今も昔と変わらず、ファンの心を動かす魅力を宿している。メイショウドトウは現在、NPO法人引退馬協会が会員の支援制度のもとで所有する「フォスターホース」の一頭として、ノーザンレイクで悠々自適の毎日を過ごす。同世代のG1・7勝馬テイエムオペラオーとはG1で6戦連続“ワンツー”の死闘を繰り広げ、6度目にして逆転初制覇を成し遂げた魂の走りは、平成競馬史の語り草だ。
あれから22年。こんな形で再び世間の注目を浴びることになると誰が予想しただろう。21年6月、メイショウドトウは国内外G1・5勝の名馬タイキシャトルとともにノーザンレイクに入り、牧場の看板猫として飼われていた「メト」と運命の出会いを果たす。「ドトウは小さいものに興味があって、追いかけたりしていました」とスタッフの佐々木祥恵さん。仲良くなるのに時間はかからず、昨年5月のある日、馬服を着たメイショウドトウの背中にメトが初めて乗る。その様子が動画でSNSに投稿されると、あまりのかわいさに、YouTube再生回数が100万回を超える大反響を呼んだのだ。
そもそもメトは、20年7月に同牧場を開設した3日後にどこからともなく現れ、住みつくようになった猫だという。「初めから厩舎とかを堂々と歩いていて、馬房の中で寝ていたり馬と自然に暮らしてきました。もともと人気のあるドトウに猫が乗れば反応があるかなと思ってアップしたら、あんなに爆発的に…」と佐々木さん。今では競馬の世界の枠を越え、猫の雑誌やテレビ、ネットメディアなど様々な取材が以前にも増して舞い込むようになった。
27歳のメイショウドトウは今も艶やかな毛色で、元気な姿を見せている。さらに現役時代以上の“発信力”を持ち、佐々木さんは「競馬以外の世界の方々にも、引退した馬のことなどいろんなことを知ってもらえるきっかけになればと思います」と目を細める。もうひと花咲かせるどころか、引退馬の新たな可能性を世間に示した、意義ある余生と言えるだろう。(坂本 達洋)
「けっこういたずら好きで、ニンジンとかを見ると目が“キラーン”と輝く」
○…最近のメイショウドトウは午前4時半前後に放牧地に出て、3~4時間ほどのんびりと過ごした後、厩舎に帰る日々を送っている。佐々木さんは「けっこういたずら好きで、ニンジンとかを見ると目が“キラーン”と輝いて、なかなかくれないとつっついたり甘がみしてきます」と笑う。高齢馬だけに暑さ対策などには細心の注意を払っており、「毎日悔いなく過ごして、その先に長寿ということになればいいと思います」と語った。
◆メイショウドトウ 父ビッグストーン、母プリンセスリーマ(父アファームド)。1996年3月25日、アイルランド生まれのセン27歳。栗東・安田伊佐夫厩舎から99年1月にデビューし、2戦目で初勝利。古馬となった00年に本格化し、同年3月の中京記念で重賞初制覇を果たす。通算27戦10勝で、うち重賞は01年宝塚記念を含む5勝。01年の有馬記念(4着)を最後に現役を引退して種牡馬に。12年世代を最後に種牡馬も引退した。