G1凱旋門賞が10月1日にパリロンシャン競馬場で行われる。小欄では過去10年で凱旋門賞の好走馬を多数出しているステップレースを紹介したい。取り上げるのは9月10日のG2フォワ賞(仏パリロンシャン・芝2400メートル)と、8月24日のG1ヨークシャーオークス(英ヨーク・芝11ハロン188ヤード)だ。
本番と同条件の古馬G2フォワ賞から臨んだ馬は過去10年で【1・3・1・25】。パッとしない数字だが、フランスの名伯楽アンドレ・ファーブル調教師の管理馬に限れば【1・2・1・3】。2019年の覇者ヴァルトガイストを送り、複勝率5割超と全く軽視できない存在になる。
そして今年のG2フォワ賞を制したのは、ファーブル師が手掛けるプラスデュキャルゼル(牝4歳)だ。5頭立ての後方2番手から末脚を伸ばし、スローペースの接戦を制した。クビ差2着のイレジンには4月の仏G1ガネー賞で4馬身差5着と後塵を拝していたが、リベンジを決める形となった。
プラスデュキャルゼルは昨年10月の仏G1オペラ賞(芝2000メートル)で、道悪をものともせず豪快な差し切り勝ち。今季は凱旋門賞を目標に使われてきた。フォワ賞当日には牝馬限定の同距離G1ヴェルメイユ賞も組まれていたが、スローペースと初経験の2400メートルをテストする上でフォワ賞を選択したという。決断したのはもちろん凱旋門賞最多8勝のファーブル師。本番を見据えて万全の態勢といったところだろう。
一方、前走G1ヨークシャーオークス組は【2・2・1・0】。牝馬限定のG1ながら2017年1着エネイブル、昨年1着アルピニスタを含めて全て3着以内に好走している。
今年の該当馬はフリーウインド(牝5歳、英・ゴスデン厩舎)。10頭立ての後方3番手あたりから追い上げたが、のちにG1ヴェルメイユ賞も制することになる3歳馬ウォームハートにはアタマ差2着と及ばなかった。ただし勝ち馬は57キロ、フリーウインドは61キロと、4キロの斤量差があった。
フリーウインドは英G2ミドルトンフィリーズS(芝10ハロン56ヤード)など牝馬限定のGレースを4勝。G1勝ちがなく、実績面では見劣りするが、本馬も「人物」の面で重要な買い材料がある。
フリーウインドの手綱を取るのは、ランフランコ・デットーリ騎手だ。凱旋門賞最多6勝を挙げてロンシャンを沸かせてきた名手も今シーズン限りでの引退を表明している。2015年ゴールデンホーン、2017&2018年エネイブルで勝利を挙げたゴスデン厩舎とのコンビだけに要注目の一頭となる。
◆成田幸穂(なりた・さちほ) 1984年8月8日、東京生まれ。(株)サラブレッド血統センター所属。週刊競馬ブック連載「海外競馬ニュース」の編集を担当。同誌のほか、研究ニュースで予想コラム「血統アカデミー」を執筆中。10月1日(日)22時30分から、ラジオNIKKEI第1「凱旋門賞実況中継」に出演予定。