◆ドバイ・ワールドC・G1(3月25日、メイダン・ダート2000メートル、15頭立て=良)
2度の衝撃波でしばらく興奮が収まらなかった。今年、3月25日のドバイ・ワールドCデーを取材した。最強イクイノックスがドバイ・シーマクラシックをコースレコードで圧勝し、異様な興奮に包まれた一日のクライマックスは、ウシュバテソーロ(牡6歳、美浦・高木登厩舎、父オルフェーヴル)で最高潮に達した。
レースは、パンサラッサにリモースが競り込み前半から速い流れになった。道中はリズムを重視し最後方。先行馬が結果を出してきたレースの歴史を考えれば厳しい位置取りかと思われたが、早めに前に進出を開始すると、勝負どころで鞍上の川田将雅騎手は、迷うことなく進路を外にとった。直線はもう伸びるだけ。4角でまだ後方だったが、そこから驚異的な破壊力で前をのみ込んだ。
悲鳴にも似た大歓声の中、鞍上は馬上インタビューに英語で答えたあと、「日本のみなさま、ありがとうございました」と絶叫。海外取材はスポーツ記者時代から経験しているが、日の丸を背負って戦う姿は何度みても誇らしい。
芝だけでなく、ダートでの世界制圧に心がさらに熱くなった。11月のブリーダーズCの時も書いたが、日本の成長は芝路線にとどまらない。1997年にJRAで初のダートG1、フェブラリーSが誕生し、その後もチャンピオンズCなどダート重賞が整備され、レース体系の充実を図ってきた。その間、ホースマンたちも、海外遠征での敗戦の中で紡いできた経験と技術を自身に落とし込み、底上げを図ってきた結果だ。長い挑戦の歴史が、世界レベルに到達したことは忘れてはいけない。
ウシュバテソーロは、BCクラシックで5着、23年最後のレースとなった東京大賞典は1着で連覇を達成した。来年も現役を続ける予定で、再び世界挑戦が視野に入っていると聞く。日本馬の世界での活躍はもう奇跡ではない。24年も世界で日本馬がどんな活躍を見せるか―。楽しみを持って待ちたい。(松末 守司)