「日本ももっと女性の方に入ってきてほしいですね」―。2月中旬のサウジCデーで現地取材中に、JRA初の女性調教師の前川恭子技術調教師=栗東=に会ったが、現地での調教風景を見つめながらふと漏らした言葉だ。
国際レースで調教中は、当然、世界各国の馬も一緒に調教するが、関係者だけでなく、騎乗する助手、厩務員にも女性が多く見られる。ほぼ半数と言っても過言ではない。日本でも、女性騎手が毎年、誕生しているとはいえ、スタッフとなると、正直、普段取材している茨城・美浦トレセンでも見かけるのはまばらで、少ないと言わざるをえないのが現状だ。
調教師誕生に関しても、JRAではかなり遅い方である。地方では過去9人(現役は8人)の女性調教師がいるが、海外でも13年から2連続で凱旋門賞を制したトレヴを管理していたのがフランスの女性調教師クリスティーアーヌ・ヘッド元調教師で、ビッグレースを制している女性調教師も多くいる。世界の競馬界では、女性が当たり前に「現場」にいる。
それだけに前川技術調教師の存在は、大きな意義がある。サウジCデーでは、サウジダービーを制したフォーエバーヤング(牡3歳、栗東・矢作芳人厩舎、父リアルスティール)をパドックなどで凜として引く姿がテレビで映し出された。同師はドバイにも帯同予定だ。「日本も乗馬の女性人口は多いですからね。競馬関係者も増えてほしいです」と同師は夢を描く。師の存在が、新たな流れを作り出し、女性の競馬界進出の一助になることを願いたい。(中央競馬担当・松末守司)