前川恭子助手がJRA初の女性調教師に 16歳の長女を育て仕事と家庭を両立「働きやすい厩舎をつくりたい」

ピースサインで喜ぶ前川恭子助手(カメラ・岩田 大補)
ピースサインで喜ぶ前川恭子助手(カメラ・岩田 大補)

 24年度の新規調教師免許試験合格者9人が7日、発表され、前川恭子助手(46)=栗東・坂口厩舎=がJRA初の女性調教師となることが決まった。一次試験受験者132人から24人が進んだ二次試験を突破した。JRA通算1809勝の田中勝春騎手(52)=美浦・フリー=らとともに来年1月1日から免許が有効となる。JRA通算1056勝の秋山真一郎騎手(44)=栗東・フリー=のみ、本人の申請で免許開始は3月1日となる。

 きりりと表情を引き締めた。5度目の挑戦で狭き門を突破。JRA史上初の女性調教師となり、新たな道を切り開いた前川さんは真っすぐ前を向いた。「率直にうれしいのひと言ですが、より責任ある立場になる」と責任感もにじませた。

 千葉・富里市生まれ。実家近くには牧場が多く、馬に囲まれた環境で育った。11歳から乗馬を始め、筑波大では馬術部に所属。部費を稼ぐため、美浦の乗馬苑でアルバイトをしていた際、トレセンで競走馬に携わる仕事があることを知ったという。北海道・浦河町のビクトリーホースランチで腕を磨き、JRA競馬学校の厩務員課程を経て03年10月から崎山博樹厩舎でトレセン生活をスタートさせた。

 思い出の一頭は産休から復帰した際の08年に担当したウエスタンダンサー。同年の京阪杯を一緒に勝ち取った。「とても能力が高くて、おとなしくていい子だった。ただ、歩様の悪さがあって、今だったらもっとできたんじゃないか」と後悔もある。その経験も今後に生かしていくつもりだ。

 藤田や今村、永島ら現役のJRA女性騎手は6人。近年、注目される騎手以外でも女性が活躍できる場が、競馬界にあることを知ってもらいたい。「女性でも男性でも馬よりは力が弱いので、女性だからできない仕事ではないと思います」と前川さん。自身も仕事と家庭を両立し、16歳の長女を育てた。「女性初ということで注目もしてもらえるでしょうし、この世界にもっと女性の方に入ってきてほしい。そういう意味でもアピールできたら」と女性トレーナーの先駆者としての役割も担うつもりだ。

 来年1月に調教師免許が交付され、当面は厩舎開業まで技術調教師として研さんを積む。「子育てもそうですし、みんなで協力して休みを決めたりして、働きやすい厩舎をつくりたい。女性従業員が入ってくれたらうれしいですね」。目を輝かせた前川さんが、競馬界に新たな風を吹かせる。(戸田 和彦)

 ◆前川 恭子(まえかわ・きょうこ)1977年4月9日、千葉県生まれ。46歳。03年7月にJRA競馬学校厩務員課程に入学し、同10月から厩務員として栗東・崎山博樹厩舎に所属。04年2月から調教助手になり、崎山厩舎解散後、田所秀孝厩舎を経て、現在は坂口智康厩舎に所属。

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