史上2人目の日本ダービー連覇など記憶にも記録にも残るジョッキー、四位洋文騎手(47)=栗東・フリー=が2月29日、76年ぶりの無観客開催となったJRAの阪神競馬場で最後の騎乗に臨み、計6鞍に騎乗して3Rで勝利を収め、通算1586勝としてムチを置いた。
降り続く雨のなか、壇上に上がった四位は、誰もいないスタンドに向かって呼びかけた。「ファンの皆さんがいない競馬場は寂しいです。なるべく早く、本来の競馬場の姿に戻ることを強く願っています」。引退式は騎手仲間と関係者のみという異例の形で実施された。
完全に“主役”だった。最初の騎乗となった3Rをハンメルフェストで勝利。レースをウィナーズサークルで見守った後輩騎手から歓声が上がると、右手を上げて応えた。5Rでは最後の直線で内に斜行し、騎乗停止処分に。ラストライドの12Rはヴィントで7着。「(声援は)アットホームな感じがあった。思い出に残る一日ですよね」と激動の現役最終日を振り返った。
12R後に検量室へ戻ると、仲間から拍手で出迎えられた。「みんな必死で泣かそうとしていたけど、我慢しました」。それでも、セレモニーの花束贈呈で先輩の横山典から言葉をかけられると「やばかったです」と目頭が熱くなった。
胴上げでは5度、宙を舞った。「これからは調教師としてウィナーズサークルに帰ってくることができるように頑張ります。いろいろ動いていかないといけないし、忙しくなります」。29年間の戦いを終えた男の目は、すでに先を見据えていた。