サイバーエージェント社長で馬主としても活躍する藤田晋氏のコラム「藤田晋の新人馬主日記」は連載2回目。所有馬が順調に勝ち星を重ね、改めて気づいた馬主の楽しさを素直につづります。
馬主として今年8月14日にレースデビューして以降、早くも6勝を挙げ、所有する2歳5頭のうち4頭が勝ち上がりました。うち1頭(ドーブネ)は来月のG1・朝日杯FSに挑戦します。楽しいかと問われれば、正直、楽しくて仕方がないです。しかしながら、自分の中では幾分か戸惑う気持ちもあります。
未勝利を勝ち上がれる馬はJRA全体で3割と聞いて自分の所有馬も良くて半分と考えていたし、ノースヒルズの前田幸治さんに「9回の落胆に1回の喜び」と教えてもらって、レースごとに期待し過ぎないよう気をつけてもいました。昔から遊んでいたダビスタやウイニングポストといったゲームで遊んでもこんな好成績は出ません。だから初年度からこの調子の良さは異常だと自分でも認識しています。
馬にお金をたくさん使えるからだと思う人もいるかもしれませんが、資金を増やしても必ず勝てるものではありません。現に私がドーブネを5億円で買ったことが競馬界でニュースになった時には高額馬は走らないとか、回収できないとか散々言われました。でもその中に「正月の初競りのマグロみたいなもの。宣伝広告費」と指摘する声がありました。すしざんまいなどが落札するアレです。もちろんそんな目的はないけど、結果的に宣伝効果はあったのかも。実際、ニュースになって注目されて、すぐに競馬界トップクラスの騎手、調教師、牧場主と会うことが出来ました。普通はゲームであってもコツコツとミッション達成を積み重ねた後に、初めて有力者とつながれるものです。
自分が意識するのは勝利数と連対率なので、今のところ順風満帆です。でも、いろんな馬主と会ってみて分かったのは、考え方は人によって本当に千差万別で、それぞれの楽しみ方があるということです。自分で繁殖した馬を走らせたい人、安い馬の中から勝てる馬を見つけたい人、目標のレースが決まっている人など、ひとつの競馬の世界でそれぞれ別のゲームをやっているくらいに馬主によって考えが違います。
私も今の好調が続くほど競馬が甘いものだとは考えていませんが、自分らしく馬主活動をエンジョイしていきたいと思います。
◆藤田晋(ふじた・すすむ)福井県生まれ。48歳。青山学院大学を卒業。インターネット事業を主に扱うサイバーエージェント代表取締役社長。ブログサービス「アメブロ」や動画配信サービス「ABEMA」などの事業も手がける。