牝馬3冠最終戦の第28回秋華賞・G1は15日、新装された京都競馬場で3年ぶりに開催される。桜花賞、オークスの春2冠を驚異的な強さで制したリバティアイランドが断然の主役。所有するクラブ法人「サンデーレーシング」の吉田俊介代表(49)がインタビューに応じ、史上7頭目の牝馬3冠、その先の展望について語った。
史上7頭目の偉業に向け、2冠牝馬は充実の夏を過ごした。オークスで466キロだった馬体は放牧先の滋賀ノーザンファームしがらきで522キロまで増え、9月12日に栗東トレセンに帰厩。吉田代表はその成長を「すごみ」と表現する。
「オークスの後はすごみを増したというか、力強さを増した雰囲気になったなと思います。今は500キロは切っているみたいですが、馬体の成長というか、すごく幅が出ましたね」
栗東・CWコースでの2週前追い切り時は497キロまで絞れ、1週前追い切りでは3頭併せで僚馬に3、6馬身先着。春2冠と同様のパフォーマンスを披露できる状態に、ひと追いごとに近づいている。
「桜花賞は落ち着きすぎていてヒヤヒヤしましたね。オークスは1回使ったことも大きかったと思いますが、コントロールが利いて、いい精神状態でしたし、安心して見ていられる競馬でした。どちらも強いレースだったと思います」
同世代の牝馬相手には一枚どころか二枚も三枚も上の力を見せつけてきたが、ダービーへの挑戦は熟議の末、見送った。
「オークスと同じ距離で同じ舞台ですが、レースの質は全然違うと思うんです。ダービーの方がより1コーナーで肉弾戦のポジションの取り合いがありますし、この時期の女の子。実際、あんなに楽にポケットには入れてもらえなかったなというのがダービーを見た感想でした。(日本競馬界の悲願である凱旋門賞も)なかったですね。オークスを選んだ時点で、ほぼ秋華賞になると思っていました」
同世代の牝馬G1を全3連勝中。今回も断然の1番人気が確実だが、吉田代表に油断はない。
「京都内回りコースはすごく後ろから行っていいかというと、そうでもない舞台だと思います。(過去の秋華賞で)結構、ギリギリまで前が残った場面も見ていますし、ブエナビスタ(09年3着降着)は後ろからでうまくいきませんでした。ジェンティルドンナ(12年1着)は相手が強かったのもありますけど、鼻差でしたからね。でも(リバティアイランドは)すごく力のある馬だと思っていますから、もちろん期待の方が大きいです」
秋華賞後のローテーションは未定。ファンとしてはジャパンCでイクイノックスとの“最強対決”も期待したいが、馬体が成長したこともあり、最も力を出せる路線をじっくり見極める考えだ。
「(イクイノックスとの対決は)見たいですけどね。オークスの時ならそう思いましたが、馬の適性は結構変わってくるので、まずは秋華賞を見てからになると思います。マイルでも十分強いと思うし、1600メートルのレースが価値がないかというと、そんなことはないと思いますから」
古馬での天皇賞・秋、ジャパンCなどG1計6勝を挙げたブエナビスタ。牝馬3冠ほか海外を含めて同7勝のジェンティルドンナ。サンデーレーシングの勝負服で一時代を築いた名牝に勝るとも劣らないポテンシャルを、リバティには感じている。だからこそ3冠は通過点。その先にはもちろん、日本競馬界の頂点、そして世界を視野に入れた大きな展望がある。
「2冠を取っているという点では同じなんですが、ブエナビスタとジェンティルドンナ自体がタイプが違うのもあって比較は難しい。でも、2頭と遜色ない能力を持っているとは思います。いずれ同じように男馬と戦うことを期待されているというか、戦っていかないといけない馬。外国にも行くと思います」
(聞き手・西山 智昭)
◆吉田 俊介(よしだ・しゅんすけ)1974年4月13日、北海道出身。49歳。祖父は社台グループ創設者の故・吉田善哉氏。父はノーザンファーム代表の吉田勝己氏。慶大卒業後、98年からの米国研修を経てノーザンファームに入社。07年から(有)サンデーレーシング代表となり、15年からはノーザンファームの副代表も務める。
◆サンデーレーシングの名牝2頭の秋華賞
▽ブエナビスタ(09年)
道中は中団やや後ろから、春2冠の2着馬で人気を分け合っていたレッドディザイアを見ながら追走した。直線で追い出しを開始したものの、先に抜け出したレッドがしぶとく踏ん張り、長い写真判定の末に鼻差の2位。さらに4コーナーの斜行で3着降着となった。
▽ジェンティルドンナ(12年)
中団を追走していたところ、人気薄のチェリーメドゥーサが道中で一気にまくり、4角で大きく後続を突き放した。場内がざわつくなか、春2冠で2着だったヴィルシーナとともに前をとらえにいく形。ゴール前までの叩き合いの末、7センチ差で3冠を達成した。