◆第54回高松宮記念追い切り(19日・中京競馬場)
春G1の開幕となる第54回高松宮記念(24日、中京)に香港から参戦するビクターザウィナーの最終追い切りが19日、中京競馬場の芝コースで行われた。直線は楽な手応えで伸び、カーチュン・リョン騎手(35)は「とてもいい感じでした」と好感触。ヤマタケ記者がコラム「見た」で陣営に鋭く迫った。
先入観を覆された。香港馬、特にトップスプリンターとなれば、鉄のよろいをまとったようなゴツいボディーと思っていた。しかし、ビクターザウィナーはムキムキという感じではなく、中肉中背といった馬体。490キロ台とはいえ、前走と2走前は出走馬の中(香港馬のみ)で2番目に軽い体重だ。500キロを超える馬が大半の香港競馬ではむしろ小柄とも言える。
香港馬にしては日本の軽い馬場への適性が高いのでは、という思いを胸に見守った芝コースでの単走追い。序盤はゆったり入り、ラスト1ハロンでリョンが反応を見るために肩ムチを入れた。最後は軽く促す程度だったが、大きな跳びで楽に加速すると、余力十分に5ハロン68秒5―11秒2をマーク。シャム調教師は「リラックスしていましたし、最後の200メートルで追い込んだ時はいい感じでした。1200メートルが一番合っていると思うので、このレースを選びました」とうなずいた。
取材するまでは軽視していた。前走のセンテナリースプリントCでG1初制覇の上り馬。今まで地元のシャティン競馬場でしか走っていない。初めての海外遠征。左回りコースも、直線の坂も経験はない。ただ、中京に入ったのは前日の18日というのに、すぐ追い切ることができたのは状態に不安がない証拠。さらにシャム師は「香港では毎週月曜の調教が左回り。乗っているスタッフから『大丈夫』と聞いている」と説明し、この日乗ったリョンも「左回りで、とてもいい感じでした。(直線の)坂も上手に走れていました」と課題のクリアに自信を見せる。
展開のカギを握る存在にもなる。リョンは「枠順次第」としながらも、「香港で逃げる競馬をしている。こちらでもそのようになると思う」と力を込めた。外国馬では15年のエアロヴェロシティ以来2頭目の高松宮記念Vを狙いにきた刺客。記者の頭の中でグンと存在感が大きくなってきた。(山本 武志)