◆第76回阪神JF・G1(12月8日、京都競馬場・芝1600メートル)
第76回阪神JF・G1(8日、京都)で、福永祐一調教師(47)=栗東=が管理するランフォーヴァウで2歳女王の座を狙う。セリでの購入から携わった“生え抜き”の一頭で、開業1年目でのG1初制覇に挑む。
充実の日々を過ごしている。3月の開業から9か月。福永調教師は「楽しいよ。ストレスが全くない。オーナーの方にやりたい馬づくりをさせてもらっているし、幸運ですよね」と笑みを浮かべる。JRA歴代4位となる2636勝のトップジョッキーから全盛期での転身。新たな一歩を踏み出す大事な一年だった。
騎手で3勝を挙げた阪神JFに調教師として臨む。勝てば開業1年目で16年ぶりのG1制覇となるが、福永師にとってランフォーヴァウで挑むことは特に大きな意味を持つ。今までのG1出走は他厩舎から引き継いだ馬で、しっかり土台はできていた。しかし、今回は初入厩から自ら手がけた2歳馬だ。開業時から何度も口にしていたのが「この世代からいきなりG1で走れるような馬が出てくれば」という言葉。“生え抜き”による初のG1出走は、今まで歩んできた9か月の確かな手応えになる。
特にランフォーヴァウは5月の“千葉セリ”で窪田芳郎オーナーに購入を勧め、4100万円で落札してもらった馬だ。「軽くて、歩きのいい馬でした。やることは一緒ですけど、自分で選んで買ってもらった馬で結果を出せれば、信頼も上がってくる。別の達成感はあります」。デビュー戦こそ出遅れから6着だったが未勝利、デイリー杯2歳Sを連勝。自らが発掘したダイヤの原石は早々と軌道に乗った。
これまで重賞2勝を含む16勝。しかし、福永師は「(1年目に)どれくらい勝つというイメージはあまりなかった」と振り返る。騎手時代と同じく、求めるものは結果よりも内容だ。「ランフォーヴァウは一戦ごとに次へ向けてという競馬をして、色々なことができる馬になった。そういう積み重ねが大事だと思います」。自らの理念を体現するような成長曲線が頼もしい。視線の先には2歳女王の座がはっきりと映っている。(山本 武志)
◆開業1年目のJRA調教師によるJRA・G1制覇 グレード制導入後の84年以降、86年阪神3歳S(現在の阪神JF、ゴールドシチー)の清水出美調教師から08年ジャパンC(スクリーンヒーロー)の鹿戸調教師まで6人。G1級では18年東京大賞典(オメガパフューム)を安田翔伍調教師が制している。
◆福永調教師の騎手での阪神JF 97年ナイスパリス(11着)の初騎乗から19度騎乗し【30313】。02年ピースオブワールドで初制覇し、10年レーヴディソール、11年ジョワドヴィーヴルで連覇を達成。レーヴディソールはランフォーヴァウと同じデイリー杯2歳Sを制しての参戦だった。