【高松宮記念】調教で馬をつくり上げる不惑40歳〝職人〟「前走より上積みある」8歳ベテランと4度目G1挑戦

松岡とともに調整を進めるウイングレイテスト(カメラ・荒牧 徹)
松岡とともに調整を進めるウイングレイテスト(カメラ・荒牧 徹)

◆第55回高松宮記念・G1(3月30日、中京競馬場・芝1200メートル)

 松岡正海騎手(40)=美浦・フリー=は、高松宮記念に8歳馬ウイングレイテストで挑む。日々の調教で積極的に馬とコンタクトを取り、レースに向けて調整を進めていく職人技に迫った。

先週のことだ。ウイングレイテストの1週前追い切りに騎乗した松岡から、印象的な言葉が返ってきた。「トモ(後肢)のバランスがまだ悪い。伸ばして分かるものだから、獣医が触っても分からないかも」。ここまで微妙な差異を察知しているのか―、驚くしかなかった。

 ジョッキーの騎乗馬への向き合い方は、大きく2つに分かれる。追い切りにあまり乗らず、レースで初めて馬とコンタクトを取る“仕事人”と、日々の調教で馬をつくり上げ実戦へ臨む“職人”だ。前者を象徴するのが短期免許の外国人だとしたら、松岡は完全に後者だ。

 「自分で馬を仕上げてレースに出すのが好きで、この仕事をやっているからね」と胸を張ったあと「追い切りのことばっかり考えているよ」と真っすぐ見つめた。馬をつくり上げる作業は一朝一夕ではなく、日々の変化を線で捉えていくもの。デビュー23年目、不惑の40歳はだからこそ、当然のように毎週馬にまたがる。

 コンビを組む8歳馬は、松岡のつくり上げた一頭だ。新馬戦から携わり、一時は手を離れたが21年10月からは追い切りもレースも騎乗し、今回が29戦目(前走は先約があった他馬に騎乗)。「経験を積んでやるべきことが分かるようになっている」と相棒への信頼は一戦ごとに増してきた。

 高齢馬なりの衰えも感じているのは確かだ。「いい馬はトランポリン。グッと沈み込んで反発するところがある。でも年を取ると、沈む負荷で疲れちゃう。それに気づいてあげることが大事。この子もそういうところが出てきているね」。もちろん、その対応として今回は併せ馬ではなく単走でしまい重点の調整を選択。「緩さが取れたし、前走よりも上積みがある」と自信を持って送り出せる仕上がりとなった。

 ウイングレイテストにとって4度目のG1挑戦。「G1は競馬でいえばゴールだから、そこを使えるうれしさはあるね」と語る瞳には、闘志が宿っていた。春のスプリント王決定戦。職人が手塩にかけた相棒とともに、嵐を呼ぶ気配が漂っている。(角田 晨)

 ◆松岡 正海(まつおか・まさみ)1984年7月18日、神奈川県生まれ、40歳。03年3月1日に中山でデビュー。同23日に初勝利を挙げる。07年ヴィクトリアマイル(コイウタ)、09年天皇賞・春(マイネルキッツ)のG12勝を含むJRA通算899勝。19年にはウインブライトで香港のクイーンエリザベス2世C、香港Cと海外G1も制した。身長162・9センチ、体重50キロ。血液型B。

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