◆第80回オークス・G1(5月19日・芝2400メートル、東京競馬場)
第80回オークス・G1(19日、東京)にカレンブーケドールを送り出すのは、兵庫・神戸市の眼科クリニックで院長を務める鈴木隆司オーナー。カレンチャン、カレンブラックヒルでG1を3勝、カレンミロティックも含め重賞11勝を挙げるが、意外にもクラシック参戦は初めてだ。先週、所有馬が通算99勝目を挙げており、節目の100勝を樫の女王決定戦で決めるか。インタビューで意気込みを聞いた。
―カレンブーケドールはトライアルのスイートピーSを勝って、オークスへ駒を進めます。
「オークスへの最終便だったので、神頼みに明治神宮の勝守と、父の形見の腕時計を身に着けて競馬場に行きました。出遅れた時は、さすがに厳しいかな、と思いました。でも、向こう正面から津村騎手の好判断で3番手まで押し上げた時は、抜かせない強さがあるので勝つ可能性が出てきたと思いました。直線は大声が出ました」
―魅力はどこでしょう?
「一番の売りは母の父スキャットダディの血ですね。産駒に米国3冠馬のジャスティファイ、英1000ギニーで人気を集めたカバーラなどがいて、距離や馬場は不問。今が旬の血統です」
―東京の2400メートルに舞台が替わります。適性は?
「望むところです。一瞬の切れ味というより長くいい脚を使うタイプ。それに、母のソラリアはチリのダービー馬です。昨年、中山のマイルで初勝利を挙げたとき、マーフィー騎手から『マイルは短い。長めの距離の方がいい』とアドバイスをいただいております。前走の疲れが心配ですが、この舞台なら(クロノジェネシスなど桜花賞上位組と走った)クイーンC(4着)の差は逆転できると考えています」
―カレンブーケドールとの出合いは。
「社台ファームさんとのご縁で庭先【注】で何頭か出していただいたなかの一頭でした。皮膚の薄さ、仕事柄で目の輝き、そして美人だったことが決め手で購入しました」
―鈴木オーナーは00年からJRAで所有馬を出走させ、これまで99勝。カレンチャン(11年スプリンターズS、12年高松宮記念)、カレンブラックヒル(12年NHKマイルC)のG1・3勝を挙げています。馬選びのポイントは?
「馬の選択は唯一、馬主が自分でできる行為。私独自の理論で購入しております。最近は繁殖牝馬が増えたので、それもマニアックな配合で楽しんでいます。その理論は長くなるので説明は控えさせてください(笑い)」
―今年の2歳の期待馬を教えてください。
「一頭挙げるならカレンブラッキーナ(牝)です。思い入れの深いブラックヒルの初年度産駒で私好みの馬体、血統。昨年のセレクトセール(1歳)で競り落としました。栗東・平田修厩舎に入厩して、10日にゲート試験に合格しました」
―意外にもクラシックへの参戦は初めて。クラシックへの思いは?
「ブラックヒルの時にダービーに出るチャンスがありました。でも、無理をさせたくない気持ちが先に立って見送ったため、今回が初めてのクラシックになりました。うちの馬は晩成タイプが多いのですが、3歳春は全ての馬がクラシックを目指します。人間なら中学生か、高校生ぐらいの時期。そんな難しい時期にしっかり仕上げていただいた国枝先生、社台ファームさん、厩舎の皆様方に感謝すると同時に、本当に光栄に思います」
―最後に意気込みを聞かせてください。
「ブーケドールとはフランス語で『黄金の花束』という意味。オークスの大舞台にぴったりで、勝利の大輪を咲かせてほしいという意味でつけました。国枝調教師は超一流トレーナーでありながら、気さくで尊敬できる方。津村騎手には、この子で一気にG1ジョッキーになってほしいですね。強豪ぞろいですが、もちろんチャンスはあると感じています」(聞き手・内尾 篤嗣)
【注】庭先取引(にわさきとりひき)のことで、競走馬の売買にあたってセリなどを介さず、生産者と馬主の間で行われる直接取引を指す。
◆鈴木 隆司(すずき・たかし)兵庫県神戸市生まれ。神戸市灘区・鈴木眼科クリニック院長。00年に馬主資格を取得し、JRA通算99勝。G1・3勝を含む重賞11勝。座右の銘は「夢の途中」。家族は妻と1女。冠名は娘の名前『かれん』から。血液型A。
<国枝調教師「馬の雰囲気は良くなっている」>
カレンブーケドールは14日、美浦・坂路を69秒7で上がり、好仕上がりをアピール。国枝調教師は「前走後は使った反動もなく、順調にきていますよ。この馬の強いところは並んでからしぶとく走ってくれるところです」と自信を示す。
前々走クイーンCは4着。当時の勝ち馬クロノジェネシスやビーチサンバなど、桜花賞で上位を占めたライバルとの再戦となる。
「その時は向こうの圧勝だったね。だけど、馬の雰囲気は良くなっているし、体の張りが良くなった。距離は延びても大丈夫です。そういう不安がないのは、いいことです」とトレーナー。初の2400メートルでの戦いで逆襲を狙っている。(松浦 拓馬)