◆第70回ラジオNIKKEI賞・G3(7月4日・芝1800メートル、福島競馬場)
福島沖を震源とする2月の地震で被災した福島競馬場が今週末、当初予定から約3か月遅れで今年の初開催を迎える。最初の重賞は3歳馬による7月4日のラジオNIKKEI賞・G3(芝1800メートル)。皐月賞16着のアサマノイタズラで重賞初タイトルを目指す嶋田純次騎手(28)=美浦・手塚貴久厩舎=に、松末守司記者が抱負を聞いた。
―アサマノイタズラは23日、美浦・Wコースの1週前追い切りで、5ハロン66秒4―12秒2でライバーバード(7歳2勝クラス)と併入しました。
「まだ緩さがあるのでビッシリやりましたが、これでしっかりしてくると思う。25日に助手さんに会ったら、追い切ってからだいぶ気が入ってきたと言ってくれました」
―皐月賞以来の調教でしたが、感触は。
「もともといい馬なのでグッと成長したという感じはないけど、改めて能力を感じました」
―その皐月賞は16頭立ての16着でした。
「ある程度、前に行きたいと思っていたので出していきました。ずっと外、外を回ることになって一番厳しい競馬になってしまったけど、消極的になるよりは良かったかなと思います」
―自身もG1初挑戦でした。
「ああいうところで勝てる騎手になるのが夢なので、改めて気持ちが入ったし、またちょっと意識も変わりました」
―アサマノイタズラは今回、初の福島1800メートルです。
「合うと思いますね。中山で勝った時も中団よりちょっと前くらいの位置でしたが、ああいう競馬ができればと思います」
―久々に福島で競馬が行われます。
「夏もどうかと思ったけど、できることになって良かった。福島のファンには(無観客のため)画面越しにはなってしまいますが、少しでもいい競馬をお見せできればと思っています」
―20日のマーメイドSで重賞を初制覇した藤懸騎手、東京パラリンピックの馬術競技代表候補に選ばれた高嶋活士元騎手は、ともに同期です。
「高嶋とは同期のグループLINEで連絡を取っていて、決まった時も連絡が入って、みんなでおめでとうと言いました。一番近くに感じる存在が頑張っているのは刺激になるし、このままでは駄目だと思わせてくれる。今度は僕が刺激を与える番ですね」
―アサマノイタズラはデビューから全5戦で手綱を執っています。抱負を。
「先生、馬主さんが、たくさんいるジョッキーの中で僕を乗せてくれている。感謝を伝えるには結果を残すしかない。この馬で重賞を取れたら最高ですね。そして、またG1に挑めるように頑張りたいです」
<取材後記>調教時間帯に嶋田を取材するのは至難の業だ。デビュー11年目を迎えたが、朝は乗っては降りて、降りては乗っての繰り返し。ずっと馬の上にいる。後輩騎手も増えたが、調教量を減らすことはしない。「競馬で乗る数は、乗っている(トップの)人たちに比べたら圧倒的に少ない。自分が競馬に乗る馬じゃなくても技術の向上になれば。たくさん乗って技術を磨いていきたい」と吐露する。
その努力もあってか所属する手塚厩舎ではG1・3勝を挙げて引退したフィエールマンなど有力馬の調教を任されてきたが、最近は他厩舎のG1馬の調教にもまたがるなど信頼が増している。「貴重な経験になっています。上を知ることはすごく大事ですからね。これを生かしていければ」。汗だくの若武者の背中が頼もしく映るのは、記者だけではないはずだ。(松末 守司)
◆嶋田 純次(しまだ・じゅんじ)1993年3月8日、埼玉県生まれ。28歳。美浦・手塚貴久厩舎所属。JRA競馬学校騎手課程の27期生で、11年にデビュー。3月5日の中山1R(ワイズアンドクール)で初騎乗初勝利を挙げる。同期は横山和生、森一馬、藤懸貴志、杉原誠人、高嶋活士、花田大昂(現助手)。JRA通算86勝。趣味はボルダリング、カラオケ、ギター。家族は母と兄。162センチ、49キロ。血液型O。