【安田隆行・元調教師コラム GⅠ帝王学】絶牝レガレイラが逆転 コンビ復活のルメール騎手が末脚引き出す

91年のダービーで優勝した安田隆行騎手騎乗のトウカイテイオー(左、20番)
91年のダービーで優勝した安田隆行騎手騎乗のトウカイテイオー(左、20番)

 今年も日本ダービーがやって来ます。ホースマンなら誰もが目指す、一生に一度の大きな舞台。私はこの世界に半世紀以上いましたから、重みは十分に分かっています。

 一番の思い出といえば、やはり1990年のトウカイテイオーです。皐月賞を完勝し、無敗の2冠へ日増しに注目が集まる日々。実は中間にわずかですか、腰の不安から調教を休んだ時期もありました。しかも、決まった枠順は大外の20番。パドックでは松元省一調教師(当時)から「ダービーポジション(1コーナー10番手以内)を取れたら取ろうか」と初めて指示を受けました。ただ、私はそんなに緊張していなかった。トウカイテイオーが1番だと信頼し切っていたからです。

 レースは指示通り、6番手と絶好のポジション。4コーナー手前では早々といけるだろうなと思えるほど、抜群の手応えでした。直線では事前に田島良保さん(注1)から「東京の直線は斜めに走らせた方が馬は伸びる」と聞いていた通り、右ステッキでしっかりと外から内へ誘導。危なげなく3馬身差の完勝でした。

 よく覚えているのはゴール板を過ぎ、馬を止めてからです。「ダービージョッキーになったんだな」。徐々に実感がわいてきた瞬間、当時の第一人者だった郷原洋行さん(注2)に馬上から「安田君おめでとう」と声をかけられました。そして、スタンドへ戻ると17万人を超えるファンが「安田コール」で出迎えてくれた。騎手冥利に尽きる最高の思い出です。私は今でも、ダービージョッキーの称号をとても誇りに思っています。

 今年も無敗の2冠を狙うジャスティンミラノが出走します。前走の皐月賞は本当に強かった。ただ、今回はそれ以上にレガレイラが気になります。昨年末のホープフルSの末脚が強烈でしたし、今回はその脚を引き出したルメール騎手とのコンビに戻るのは非常に大きい。さらに調教過程でもハードに映った皐月賞時より、今回は随分とゆとりを持たせている印象です。これもプラスに働くでしょう。十分に逆転もあるのではとないでしょうか。

 あと、シンエンペラーも挙げておきます。こちらは栗東・CWコースの1週前追い切りが本当に良かった。大一番を知り尽くす矢作厩舎がしっかり仕上げてきたと思います。(JRA元調教師)

  (注1)1965年に騎手デビュー。71年にヒカルイマイで戦後最年少のダービージョッキーとなった。92年に引退。

 (注2)1962年に騎手デビュー。67年には関東リーディングに輝く。79年に全国リーディング。1515勝を挙げ、93年に引退。

 ◆安田 隆行(やすだ・たかゆき)1953年3月5日、京都府生まれ。71歳。72年に騎手デビューし、91年にトウカイテイオーで皐月賞と日本ダービーを勝利。94年に引退。調教師となって95年に栗東で開業し、3月5日の定年解散までJRA通算967勝。重賞はGⅠ・14勝を含む59勝。海外GⅠは3勝。安田翔伍調教師は次男。

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