◆第29回秋華賞・G1(10月13日、京都競馬場・芝2000メートル)
第29回秋華賞・G1は13日、京都競馬場の芝2000メートルで行われる。桜花賞はステレンボッシュ、オークスはチェルヴィニアが1冠ずつ分け合って迎える牝馬3冠の最終戦だ。「考察」は、ヤマタケ(山本武志)記者が担当。プロローグでは20年に3冠を達成したデアリングタクトの「特別感」ある臨戦過程を振り返り、実績馬上位と見るなか、穴馬探しに意欲を燃やした。
静かな空間に緊張感が張り詰めていた。コロナ禍で890人のファンしか入れず、声援も制限されていた20年。蹄音しか響かない京都のターフで、デアリングタクトが突き抜けた。史上6頭目となる牝馬3冠を達成。「馬がすごい…」。プレッシャーから解放された杉山晴調教師のホッとした表情はよく覚えている。
中間に注目されたのはオークス以来、中146日での実戦という点だ。実は前2年のアーモンドアイ、クロノジェネシスも直行での戴冠(たいかん)だったが、デアリングタクトは史上初だった無敗3冠への挑戦。トレーナーは「私の最終的な判断で直行を決めました」と引き締まった表情で何度も説明し、松山に4週連続で追い切りに騎乗させるなど特別な雰囲気が漂っていた。
しかし、時代は変わった。アーモンドアイが勝った18年以降の6年でオークスからの直行組が5勝。調教技術が発達した今、普通どころか、消耗の少ない「黄金ローテ」になっている。そして、今年も人気を分け合いそうなステレンボッシュ、チェルヴィニアの2頭がオークス以来の実戦となる。
実は2頭とも1冠目の桜花賞も間隔が空いた今年初戦。どちらも栗東滞在で調整したが、結果は明暗が分かれた。当時13着だったチェルヴィニアが今回は美浦調整に切り替え、桜花賞を勝ったステレンボッシュは“成功体験”を踏襲するように再び栗東へやって来た。臨戦過程の対比も面白い。
今年は東西トライアルで優先権を獲得し、今回も出走予定の5頭中4頭が春もG1に出走していた馬。基本は実績馬上位という見立てだ。となれば、当然2強の壁は厚いが、1週間の「考察」で納得いく穴馬を導き出したい。(山本 武志)