中央競馬の暮れの大一番、第66回有馬記念・G1(26日・中山)のファン投票で1位を獲得した3歳馬のエフフォーリアが22日、美浦・Wコースの最終追い切りで、異次元の加速を見せた。瞬時にトップギアに入る加速力から、管理する鹿戸雄一調教師(59)は、同じ3歳で02年の有馬記念を制したシンボリクリスエスのレベルに近づいたと断言。松末守司記者が「見た」で、現役最強の呼び声が高い3歳馬に迫った。
言葉とは裏腹に、その表情は自信に満ちあふれている。エフフォーリアの追い切り後に行われた会見では、鹿戸調教師は「挑戦者として挑む」と謙遜した。しかし、同じ3歳馬で天皇賞・秋、有馬記念を制した祖父のシンボリクリスエスの名前をふると、「こちらが思っている以上に力をつけている。近づいてきたよね」と言い切った。
くしくもシンボリクリスエスは、騎手時代の鹿戸師が藤沢和厩舎の調教に参加し、何度となくまたがった極上の背中だった。「似ている部分はある」と、偉大なる名馬と比較しても恥ずかしくない愛馬の成長を感じ取っている。
最終追い切りは、その才能を存分に見せつけた。美浦・Wコースで外に入った半弟のヴァンガーズハート(2歳新馬)、内マイネルミュトス(5歳3勝クラス)の2頭を追走する形でスタート。手綱を持ったままでも迫力あるストライドを繰り出し、真ん中に入った直線で集中力を高めると、1000メートル69秒0―11秒4で外に1馬身、内には3馬身先着した。
特筆すべきは、2ハロン目から4ハロン目まで同じラップを刻んでいること。それでいてラスト1ハロンだけ瞬時に11秒4まで持って行く加速力には舌を巻いた。手綱を執った横山武の感覚も見逃せないが、これは高い操縦性を意味する。この器用さが、トリッキーな中山の2500メートルの舞台で最大の武器になる。「ポジションを取れるし、ある程度前に行っても最後に脚を使える。レースセンスがある」と、鹿戸師はうなずいた。
ファン投票は、歴代最多得票で堂々の1位に選出された。天皇賞・秋では、3冠馬コントレイル、グランアレグリアを撃破。シンボリクリスエス以来となる19年ぶりの3歳Vを成し遂げた現役最強馬と言っても過言ではない。「もっと上を目指したいと思っているし、結果にこだわって頑張りたい」と指揮官。人馬ともに新時代の旗手が、歴史的な勝利で暮れの大一番を締めくくる。(松末 守司)
◆横山武史騎手に聞く
―エフフォーリアの追い切りは2週続けての騎乗です。
「天皇賞・秋に比べると若干落ちるかなという気はします。完璧な仕上がりだったので、さすがにそれをずっと維持することはとても難しいこと。それでも8割、9割の出来にはあると思うので、そんなに気にしていないです」
―前走の天皇賞・秋を振り返って。
「馬の力を発揮できたかなと思います。馬もしっかり勝ち切ってくれて、馬に感謝しています」
―中山・芝2500メートルの適性は。
「距離だけではなく、とてもトリッキーなコースだと思います。そのぶん、より一層の騎乗技術が求められてくるのかなと思います」
―ファン投票では1位に支持されました。
「馬が強いので力を信じて乗るだけです。(ファン投票1位は)それだけ期待を背負っていると思いますし、自分自身プレッシャーもありますが、それをバネにして頑張りたいと思います」