ジョッキーは実年齢より若く見える。日々のトレーニング、体重管理など節制のたまものだろうといつもリスペクトしているが、菱田裕二騎手=栗東・岡田稲男厩舎=が9月26日で30歳になったと気づいた時は「そうなんや」と思わず声が出た。
デビュー11年目。調教中のわずかな空き時間に話を聞きに行くと「ここまでやって来られたのは所属厩舎をはじめ、たくさんの方のサポートがあったから。また次の10年を続けようと思ったら、同じように周りの助けが必要。感謝を忘れずやっていきたいです」とハキハキ答えてくれた。
表情からは充実ぶりが伝わってきた。9月上旬まで続く約3か月の北海道シリーズ。調教のない月曜以外の週6日は、開門から閉門までほとんどの時間を馬上で過ごす。例年通りだが、今年は特にハードだったようで、一番多い日は14頭にまたがったという。「技術を身につけ、もっと信頼を得ていかないといけない立場。レースで乗らない馬にもたくさん乗せていただき、ありがたかったですね。きつかったけど、体の調子は今までで一番いいと感じています」と笑顔で振り返った。
「同年代のスポーツ選手の活躍は刺激になります。競輪の松浦(悠士)さんとは親しくさせていただいています」と目を輝かせる。全国で9人しかいないS級S班所属で、2学年上となるトップレーサーとの親交は大きな財産。2場開催で騎乗数が少なくなっても「頑張れば、3場開催の時よりアピールになる」と前向きに臨んでいる。
2022年は9月26日時点で39勝(JRA通算420勝、重賞5勝)。昨年の34勝を超えた。キャリアハイは3年目にマークした64勝。「相当うまくいけば届くかも知れませんが、内容も大事にしたい」と焦りはない。9月は4週続けて重賞に騎乗。30代最初の週末もスプリンターズS・G1にラヴィングアンサー(牡8歳、栗東・石坂公一厩舎、父ダイワメジャー)で参戦する。「急に大きなチャンスが増えるとは思いませんし、一つずつコツコツやっていけば、絶対に先へつながると信じています」。地に足をつけて上位食い込み狙う。
今年は19年目の丹内祐次騎手=美浦・フリー=が60勝(9月26日現在)と自己最高を更新する躍進を見せている。「夏を越して成長した姿を見せたい」と張り切っている西の「ユウジ」にも注目していきたい。(中央競馬担当・吉村 達)