【エリザベス女王杯】女王が愛した ハイクレアの子孫 テルツェット、ジェラルディーナ、アンドヴァラナウトがVへ闘志

カップを前にほほ笑むエリザベス女王(左)
カップを前にほほ笑むエリザベス女王(左)
19年、アスコット競馬場のパドックをエリザベス女王を乗せた馬車が周回
19年、アスコット競馬場のパドックをエリザベス女王を乗せた馬車が周回

 第47回エリザベス女王杯・G1(13日、阪神)は、英国のエリザベス女王が死去して初開催となる“牝馬の祭典”だ。G1初勝利を狙うテルツェット、ジェラルディーナ、アンドヴァラナウトは、女王が馬主として所有したハイクレアの子孫ディープインパクトの血を引く3頭。テルツェットは唯一のディープ産駒で、陣営も勝利に闘志を燃やす。4回連載「God Save The Queen エリザベス女王と日本競馬」では、同G1創設の背景にも迫る。

 記念すべき一戦は波乱の幕開けとなった。1976年11月21日、京都競馬場で、第1回エリザベス女王杯が行われた。優勝したのは8番人気の伏兵ディアマンテ。来賓席には、ジファード駐日英国公使の姿があった。

 3歳牝馬(当時4歳)の3冠目に位置付けられる「ビクトリアカップ」がスタートしたのは70年。そのビクトリアカップが、エリザベス女王杯と名前を変えた。75年、エリザベス女王が初めて日本を公式訪問。これが契機だった。

 今年9月8日、競馬を心から愛する女王逝去のニュースが駆け巡った。96歳。ロンドン郊外にあるアスコット競馬場は英国王室の所有で、女王自身も頻繁に足を運び、馬主生活は半世紀に及んだ。英クラシックはエプソムダービーを除く4レースを手にするなど、功労者として英国競馬殿堂入り。74年、ハイクレアでは英1000ギニー、仏オークスを制覇した。同馬の孫がウインドインハーヘア。そののち、日本近代競馬を席巻するスーパーホース、ディープインパクトの母だった。

 そのハイクレアの血は第47回のレースも鮮やかに彩ることになる。テルツェットはメンバー唯一のディープインパクト産駒。ジェラルディーナとアンドヴァラナウトは母の父がディープだ。

 この3頭はいずれもG1未勝利の伏兵ながら、過去10年で単勝1番人気が勝ったのは2020年のラッキーライラックのみ。特にテルツェットは所属するシルクレーシングの規定で来年3月に引退予定。ラストチャンスの可能性が高い。テンションが上がりやすい馬だが「そこは長所でもあると思う」と和田正調教師はプール調教も取り入れ気性面のケアに取り組んでいると聞く。エリザベス女王が亡くなった年のエリザベス女王杯だけに、馬券的にはかなり気になる存在だが、話をひとまず47年前に戻すことにする。

 その当時、エリザベス女王来日の情報に敏感に反応したのは、日本中央競馬会だった。なぜか。日本競馬にとって、英国は常に意識してきた競馬先進国だった。(編集委員・吉田 哲也)

=つづく=

テルツェット
テルツェット

 ハイクレアのひ孫にあたるディープインパクト産駒が悲願のG1初タイトルへ上昇気配だ。前走のクイーンSは直線で内の狭いスペースをついて差し切り、連覇&重賞3勝目をゲット。和田正調教師は「体のボリューム感がアップして、パワフルさが増したと思っています」と秋の最大目標に向け、予定通り調整を進めている。今年の春2戦が432キロ。前走は自己最高体重となる436キロと、地力強化は数字にも表れている。(美浦)

ジェラルディーナ
ジェラルディーナ

 母は牝馬3冠ジェンティルドンナで、母の父がディープインパクト。ハイクレアは日本の“3冠馬”を間接的ながらも出したことになる。そんな超良血は前走のオールカマーで重賞初V。勢いに乗ってのG1挑戦だ。「カイバの量同じですから、食べた分がしっかり実になってきている。距離は2000メートル以上あった方がいいタイプ」と団野助手。今週の最終追い切りは新コンビのCデムーロが騎乗予定だ。(栗東)

アンドヴァラナウト
アンドヴァラナウト

 母のグルヴェイグは「ディープインパクト×エアグルーヴ」の配合でハイクレアの末裔(まつえい)と言える血筋。昨秋のローズS以来、勝ち星から遠ざかっているが、秋初戦の府中牝馬Sを3着でまとめ、この中間は順当に上向いている。「動きはいいですよ。この馬は1回使って、ガラッと良くなる馬。ちょうど良くなっていると思います」と山田助手。昨年の秋華賞3着の実績馬が、3着以内を外していない好相性の阪神で一発を狙う。(栗東)

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