第47回エリザベス女王杯・G1(13日、阪神)は、英国のエリザベス女王が死去して初開催となる“牝馬の祭典”だ。G1初勝利を狙うテルツェット、ジェラルディーナ、アンドヴァラナウトは、女王が馬主として所有したハイクレアの子孫ディープインパクトの血を引く3頭。テルツェットは唯一のディープ産駒で、陣営も勝利に闘志を燃やす。4回連載「God Save The Queen エリザベス女王と日本競馬」では、同G1創設の背景にも迫る。
記念すべき一戦は波乱の幕開けとなった。1976年11月21日、京都競馬場で、第1回エリザベス女王杯が行われた。優勝したのは8番人気の伏兵ディアマンテ。来賓席には、ジファード駐日英国公使の姿があった。
3歳牝馬(当時4歳)の3冠目に位置付けられる「ビクトリアカップ」がスタートしたのは70年。そのビクトリアカップが、エリザベス女王杯と名前を変えた。75年、エリザベス女王が初めて日本を公式訪問。これが契機だった。
今年9月8日、競馬を心から愛する女王逝去のニュースが駆け巡った。96歳。ロンドン郊外にあるアスコット競馬場は英国王室の所有で、女王自身も頻繁に足を運び、馬主生活は半世紀に及んだ。英クラシックはエプソムダービーを除く4レースを手にするなど、功労者として英国競馬殿堂入り。74年、ハイクレアでは英1000ギニー、仏オークスを制覇した。同馬の孫がウインドインハーヘア。そののち、日本近代競馬を席巻するスーパーホース、ディープインパクトの母だった。
そのハイクレアの血は第47回のレースも鮮やかに彩ることになる。テルツェットはメンバー唯一のディープインパクト産駒。ジェラルディーナとアンドヴァラナウトは母の父がディープだ。
この3頭はいずれもG1未勝利の伏兵ながら、過去10年で単勝1番人気が勝ったのは2020年のラッキーライラックのみ。特にテルツェットは所属するシルクレーシングの規定で来年3月に引退予定。ラストチャンスの可能性が高い。テンションが上がりやすい馬だが「そこは長所でもあると思う」と和田正調教師はプール調教も取り入れ気性面のケアに取り組んでいると聞く。エリザベス女王が亡くなった年のエリザベス女王杯だけに、馬券的にはかなり気になる存在だが、話をひとまず47年前に戻すことにする。
その当時、エリザベス女王来日の情報に敏感に反応したのは、日本中央競馬会だった。なぜか。日本競馬にとって、英国は常に意識してきた競馬先進国だった。(編集委員・吉田 哲也)
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ハイクレアのひ孫にあたるディープインパクト産駒が悲願のG1初タイトルへ上昇気配だ。前走のクイーンSは直線で内の狭いスペースをついて差し切り、連覇&重賞3勝目をゲット。和田正調教師は「体のボリューム感がアップして、パワフルさが増したと思っています」と秋の最大目標に向け、予定通り調整を進めている。今年の春2戦が432キロ。前走は自己最高体重となる436キロと、地力強化は数字にも表れている。(美浦)
母は牝馬3冠ジェンティルドンナで、母の父がディープインパクト。ハイクレアは日本の“3冠馬”を間接的ながらも出したことになる。そんな超良血は前走のオールカマーで重賞初V。勢いに乗ってのG1挑戦だ。「カイバの量同じですから、食べた分がしっかり実になってきている。距離は2000メートル以上あった方がいいタイプ」と団野助手。今週の最終追い切りは新コンビのCデムーロが騎乗予定だ。(栗東)
母のグルヴェイグは「ディープインパクト×エアグルーヴ」の配合でハイクレアの末裔(まつえい)と言える血筋。昨秋のローズS以来、勝ち星から遠ざかっているが、秋初戦の府中牝馬Sを3着でまとめ、この中間は順当に上向いている。「動きはいいですよ。この馬は1回使って、ガラッと良くなる馬。ちょうど良くなっていると思います」と山田助手。昨年の秋華賞3着の実績馬が、3着以内を外していない好相性の阪神で一発を狙う。(栗東)