◆第47回エリザベス女王杯・G1(13日、阪神競馬場・芝2200メートル=重)
第47回エリザベス女王杯は13日、阪神競馬場で行われ、母ジェンティルドンナの良血ジェラルディーナが最後の直線で抜け出して、初のG1制覇を飾った。短期免許で来日中のクリスチャン・デムーロ騎手(30)=イタリア=はJRA・G1通算4勝目。同レースでは16、17年に連覇した兄ミルコ・デムーロ騎手(43)=栗東・フリー=との史上2組目の兄弟制覇となった。2着はウインマリリン(レーン)とライラック(Mデムーロ)で、G1での2着同着はグレード制導入の84年以降、初めて。
薄曇りの仁川が、一瞬で華やいだ。大外のジェラルディーナが、4角から一心不乱に前を追う。Cデムーロの激しいアクションに応え、鮮やかな末脚を披露。ゴール数十メートル手前で抜け出しても、勢いは止まらなかった。「集団でもいい手応えだったし、いい瞬発力で直線に向いた。強い競馬だった」。検量室前に引き揚げると、鞍上はパートナーの首元にキス。最大級の賛辞を贈った。
18頭立ての大外枠。イタリア出身の名手は「特にレースプランは考えず、ゲートを出て考えた」と冷静だった。序盤は後方で、向こう正面でじわじわと進出。クライマックスに向けて、最高のエスコートを見せた。JRA・G1は18年阪神JF以来4勝目。「多くのファンの方々に、勝てるところを見てもらえてうれしかった」。ゴール後、歓声が湧くスタンドを手ぶりでさらにあおった。再び降り始めた小雨を吹き飛ばすような盛り上がりだった。
“お嬢様”のジェラルディーナが、女王の座をつかんだ。母ジェンティルドンナは牝馬3冠を含めてG1・7勝。父もG1・6勝のモーリスというスーパー良血として生まれた。3歳時に自己条件3連勝でオープン入りしたが、重賞では5連敗と結果を出せず。前走のオールカマーでついに初タイトルを獲得すると、そのまま頂点へ駆け上がった。
斉藤崇調教師にとっても、喜びはひとしおだ。21年3月、母も手がけた石坂正厩舎の定年解散に伴い、娘を引き継いだ。「これだけの血統なので、皆さん期待していた」。順風満帆ではなく、転厩初戦の城崎特別では手綱が外れて逸走。それでも着実に成長させ、待望のG1制覇。「いつか大きいところを取りたいと思っていた。やっと勝てた」と感慨に浸った。
今後は状態を見て決められるが、指揮官は「年内にもう1走できたら。もっともっとジェラルディーナと上を目指していきたい」と未来を描いた。回り道をしながらつかんだ女王の称号。偉大な両親の名に負けず、胸を張って歩み続ける。(水納 愛美)
◆ジェラルディーナ 父モーリス、母ジェンティルドンナ(父ディープインパクト)。栗東・斉藤崇史厩舎所属の牝4歳。北海道安平町・ノーザンファームの生産。通算16戦6勝。総獲得賞金は2億9896万7000円。主な勝ち鞍はオールカマー・G2(22年)。馬主は(有)サンデーレーシング。