栗東トレセンで研修する元地方2000勝ジョッキー、酒井忍調教師のふたつの夢

栗東トレーニングセンターで研修中の酒井忍調教師(カメラ・山下 優)
栗東トレーニングセンターで研修中の酒井忍調教師(カメラ・山下 優)

 1月の栗東トレーニングセンターに、見慣れない黄色と青の染め分けのヘルメットをかぶった人物がいた。地方競馬で通算2053勝を挙げ、昨年11月30日で騎手を引退した酒井忍調教師(川崎)だ。1月は中内田厩舎、2月からは高柳大厩舎で研修する。

 「厩舎の開業まで時間があるので、研修という形で栗東に来ました。調教騎乗のほかに、放牧先の牧場にいる馬を見に行かせてもらっていますが、すごく勉強になります」と充実感をにじませた。続けて「中内田厩舎は馬だけでなく、スタッフも一流。プロ意識が高く、妥協は一切ありません。先生が自ら先頭に立って引っ張っていますし、まさに理想的な厩舎です。馬に触らせてもらえるだけでありがたい」とトップステーブルのすごさを肌で感じている。

 だが、肝心なのは川崎で厩舎を開いた時に、この体験をどう生かすかだと酒井調教師は話す。「いま栗東でしていることを川崎でしようとしても、全部はできない。施設もスタッフも違うわけですから。ただ、学んだ考え方は必ず生きてくると思います。大切なのは馬が状態のいい時にレースに送り出すこと。これは当たり前のようで、実はとても難しいことなんです」。中内田厩舎は昨年の勝率もJRA1位と、馬の状態を詳細に把握しているからこその結果であり、酒井調教師もその教えを強く胸に刻んでいる。

 目標を尋ねると「南関東のホースマンにとって、東京ダービーだけは特別。騎手ではキングセイバー(2002年)で勝たせてもらったけど、あれで自分の名前も売れたからね。馬にも八木仁先生にも感謝しているし、調教師としても勝ちたいですよ」と熱く語った。

 弟でJRAの酒井学騎手とはとても仲が良く「去年、重賞で同じレース(10月6日の大井・レディスプレリュード)に乗ったときに、最後だから負けないぞって言ったら僕が5着、学が7着でね。いい思い出です」とうれしそうに振り返った。

 そんな新人トレーナーにはもうひとつの夢があるという。「父がまだ厩務員をやっているんで、開業したら僕の厩舎にきてもらおうかなと。そして(交流競走の日などで)タイミングが合えば、父が世話する馬に学が乗ってくれないかな…って思っているんです」と優しい笑顔を浮かべた。そんな酒井家の夢がかなう日を、私も楽しみにして待ちたいと思う。(中央競馬担当・山下 優)

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