◆第67回大阪杯・G1(4月2日、阪神・芝2000メートル、良)
レジェンドが、競馬界の新たな扉を開いた―。第67回大阪杯は武豊騎手(54)=栗東・フリー=の手綱でジャックドールが逃げ切って初のG1制覇。鞍上は54歳19日でJRA・G1のジョッキー最年長勝利記録を更新し、前人未到のG180勝に到達した。事前に想定したタイムと0秒1差で前半1000メートルのペースを作ると、レースレコードを更新し後続を鼻差しのぐ究極の名人芸。「ホントに、ホントにうれしい」と喜びを爆発させた。
桜舞う仁川での大接戦。さすがのレジェンドも確信がなかった。検量室前に引き揚げてきた武豊は、陣営に向けて「勝ってる?」と少し不安げな表情で第一声。ジャックドールの鼻差でのG1初制覇を確認すると、藤岡調教師と固いハグを交わし「香港でいいレースができなかったのに、またチャンスをもらえてすごくうれしかったし、結果で応えたい気持ちがすごく強かったです。ホントに、ホントにうれしい」と満面の笑みで喜びをかみしめた。
「0秒1差」に、天才たるゆえんが凝縮していた。好スタートを決めた1角の入り。内外から競り掛けようとするライバルに譲らず、ハナを主張した。「(スタートは)大きいポイントになると思っていました。今日の馬場状態だと遅くする必要はないと思っていたし、59秒ぐらいで入りたいと思っていました」
言葉通りの前半5ハロン58秒9での逃げ。さらに5ハロン目から9ハロン目まで11秒台で通過するよどみない流れを刻むと、4角は手が動く他馬を尻目に持ったままで直線へ。測ったようにスターズオンアースの追撃をしのぎ、G1昇格後のレースレコードを0秒8更新。前走の香港Cはゲートが決まらず、中団からの競馬で7着に敗れたが「今日はパドックから返し馬、ゲート裏と香港の時より落ち着いていました」。2度目の騎乗でG1にふさわしいパフォーマンスを引き出してみせた。
54歳19日でのG1レース勝利は、岡部幸雄騎手の53歳11か月27日を抜いて最年長。「そのたびに年がばれるので照れくさいですけど、その記録を今度は自分で更新していけるように頑張りたいですね」。節目のG180勝はもちろん前人未到。9日の桜花賞から始まるクラシック戦線へ、自らの手綱で最高の弾みを付けた。(玉木 宏征)