【天皇賞・春】08年アドマイヤジュピタでV 友道康夫調教師が感涙 原点の一戦

生涯一度のG1出走で勝ち切ったアドマイヤジュピタ(手前)
生涯一度のG1出走で勝ち切ったアドマイヤジュピタ(手前)

◆第167回天皇賞(春)・G1(4月30日、京都競馬場・芝3200メートル)

 2008年は、私が初めて伝統ある春の盾の勝ち馬原稿を任された一戦だった。混戦の中で有力だった一頭が、当時から親しくさせてもらっている友道調教師のアドマイヤジュピタ。まだ若かった記者は、ジュピタが勝つケースだけを頭の中で色々とシミュレーションしていた。ところが、好位からの安定したレースが売りだったはずのジュピタは大きく出遅れ。まさかの事態に、頭は一瞬真っ白になった。

 結果は、勝負どころで一気にまくる想定外の競馬でG1初制覇。頭の中を整理しながらたどり着いた検量室前で、またまた驚いた。普段から感情を表に出さず、淡々としている友道師が泣いていたのだ。「競馬場で泣いたのは初めてだと思う。近藤さんが泣かれているのを見て、もらい泣きしてしまって…」。アドマイヤの冠で知られる故・近藤利一オーナーがとにかく欲した天皇賞。特にこの年は大挙4頭出しで、レース当週には4陣営の関係者を集めた決起集会を開くなど、勝負の大一番だったのだ。

 アドマイヤジュピタのG1出走はこの一度きり。3歳春に中1週で起用した後、右後肢の骨折で約1年半休養したこともある。「クラシックに出したかった馬。それで無理をさせてしまったのかもしれない」。友道師が当時口にしていた悔いが、レース数をあまり使わず目標の一戦へしっかり仕上げる現在のスタイルを作り上げ、トップステーブルへの成長に結びついたと思う。まさに厩舎の原点。その一世一代の走りは、慌てまくっていた記者の脳裏にも鮮明に残っている。(山本 武志)

 ◆2008年の春の盾 前走でオープンのレースを勝っている馬が1頭のみで、G1ホースも2頭と傑出馬不在。単勝10倍以下が5頭の大混戦だった。レースは直線で外からまくり気味に進出したアドマイヤジュピタとメイショウサムソンが後続を引き離し、2頭のマッチレース。最後はアドマイヤジュピタが頭差出て、G1初制覇を飾った。

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