◆第149回ケンタッキーダービー・米G1(5月7日、チャーチルダウンズ・ダート2000メートル)
再び歴史を刻むために戻ってきた。矢作調教師にとって米国遠征はラヴズオンリーユーとマルシュロレーヌで日本馬初のブリーダーズC(BC)制覇を果たした21年秋以来となる。
「普段競馬を知らないアメリカに住む日本の人も、BCは知らなくてもケンタッキーダービーは知っている。そんなレースです。恐らく、生で『My Old Kentucky Home』を聞いたら泣いちゃうよ。憧れだったから」
パンサラッサでダートのサウジCを制したように、今回も緻密な戦略は働いている。まずは馬場の適性。「芝でも走れる馬が土のダートには合う」という持論をマルシュロレーヌがBCディスタフで実証した。ただ、コンティノアールは5戦すべてダートを走っている。
「実は芝でも、と思っている馬なんです。だから、海外遠征を考えました。あと、チャーチルダウンズは特に地盤が硬い。その点で日本馬に向いているのかなという見立てはしています」
さらにレースの適性だ。愛馬の現時点での最大の武器は持久力と判断したうえ、レースの青写真をはっきりと思い描く。
「肉を切らせて骨を断つじゃないけど、ハイペースにある程度付き合わないと勝負にいけないと思っています。そこから、どんどん脱落していって、いかに生き残るかの競馬でしょう」
世界各地を渡り歩いてきたからこそ、誰よりも重みが分かる。「世界のYAHAGI」が再びアメリカで大勝負に打って出る。(山本 武志)
◆My Old Kentucky Home アメリカ音楽の父と評されるスティーブン・フォスター氏が1852年に作曲。現在はケンタッキー州の州歌。ケンタッキーダービーでは出走馬の馬場入場時に観客全員で斉唱することが伝統となっており、盛り上がりは最高潮に達する。