◆第43回ジャパンカップ・G1(11月26日、東京・芝2400メートル)
今週は第43回ジャパンC・G1が26日、東京競馬場で行われる。坂本達洋記者は「考察」プロローグ編で、アーモンドアイが引退レースでJRA史上最多の国内外・芝G1・9勝目を挙げた20年をピックアップ。一線級で活躍を続けた名牝の姿に、同じ勝負服でG1・5連勝中と快進撃を続けるイクイノックスの姿をダブらせた。
あの時は引退の花道を飾った感動よりも、あっさりと勝って拍子抜けしたような不思議な気持ちが強かった。芝G1史上最多となる9勝を挙げたアーモンドアイが、金字塔を打ち立てたラストランの20年のジャパンC。コントレイル、デアリングタクトとの歴代3冠馬対決で大いに盛り上がりを見せたが、終わってみれば好位4番手から危なげなく押し切った。5歳秋でも輝きを失わない女王の姿に、「まだまだやれそうだよな…」という思いを胸に取材へ走った。
長らく主戦を務めたルメール騎手は、レース後の共同会見で興奮冷めやらぬ様子だった。そこで記者は「アーモンドアイのピークはいつだったと思いますか?」と質問。「いい質問ですね」とニヤッと笑った鞍上は「前走の天皇賞・秋の後にパワーアップして、今日がトップだったかもしれない」と答えた。力の衰えを見せないまま引退したことは、見事なまでの“引き際の美学”を見せつけられた思いだった。
最近、現役時に管理した国枝調教師に同じ質問をした。最も印象深いレースには2分20秒6の驚異的レコードで勝った3歳時(18年)のジャパンCを挙げる名伯楽だが、ピークについては「まだいけるのではと、余裕を残して終わったからね」と我が意を得たりという感じの答えが返ってきた。
さらに「(同じく牝馬3冠に輝いた)アパパネの最後の方はピークを過ぎて衰えたけど、アーモンドアイがびっくりなのは、(引退レースで)あのパフォーマンスをできたこと」と称賛。古馬となって落ち着きが出てきても、レースで走る気持ちを失わない名牝だった。
今年のジャパンCは、同じ勝負服とジョッキーを背にイクイノックスが国内外G1・6連勝に挑む。この馬もこれからピーク論争が尽きないだろう名馬には違いなく、18年のレコードを塗り替えてもおかしくない予感がする。今回が自身最高の走りを見せる舞台になるのか。アーモンドアイと同じように牝馬3冠を達成した後に参戦するリバティアイランドなど相手も強力。いずれにせよ最高の頂上決戦が見られるのは確かだ。(坂本 達洋)