◆有馬記念追い切り(20日・栗東トレセン)
忘れられない言葉がある。天皇賞・秋の直後。杉山晴調教師から「あの競馬はいい追い切りみたいだった。使った後、すごく具合がいいんです」とジャスティンパレスについて聞いた。2着だったが、1分55秒6という超高速時計で疲労を心配していただけに驚いた。
発馬で後方になったが、前半5ハロン57秒7という速い流れに付き合うことなく、直線入り口では最後方。「(横山)武史が腹をくくって、しまいに懸ける競馬をしてくれましたから。あの競馬は馬にとってしんどくないと思うんです」。道中でジッとためを利かせ、直線で一気に負荷をかける。確かにメリハリを利かせた上がり重点の追い切りのような走りだ。この“刺激”が体調をグンと上向かせた。
この日は栗東・坂路で単走。53秒3―12秒4と目立つ動きではなかったが、充実ぶりは調整過程に如実に現れている。7着だった昨年と1週前まで追い切り5本という数こそ同じ。しかし、昨年は距離が4ハロンの坂路4本にCWコースの6ハロン追いが1本だったが、今年は坂路3本にCWコースでの7ハロン追いが2本と明らかに強度を上げている。
「馬体もふっくらしているし、悔いのない仕上げを、ということです」。そう振り返る杉山晴師はさらに一見、平凡にも映った最終追いについてもこう説明した。「前走から当該週に坂路でやっていますが、長距離輸送があった当日のパドックでの雰囲気を見ると、その方がいいんじゃないかと思い、今回も踏襲しました」。全国リーディングトップを走る若きトレーナーが施した盤石の仕上げ。視線の先には、はっきりと勝利が見えている。(山本 武志)