【安田隆行元調教師コラム G1帝王学】距離と道悪に高い適性感じるナムラクレア

安田隆行元調教師(左)は2021年の高松宮記念をダノンスマッシュで勝利
安田隆行元調教師(左)は2021年の高松宮記念をダノンスマッシュで勝利

◆第54回高松宮記念・G1(3月24日、中京競馬場・芝1200メートル)

 3月5日に定年引退した安田隆行元調教師が、自身にゆかりあるビッグレースを語るコラム「G1帝王学」がスタート。第1回は高松宮記念。JRA通算967勝の名伯楽は4頭出しで臨んだ2012年の思い出だけでなく、独自の分析で今年の注目馬を挙げた。(不定期掲載)

 この春からスポーツ報知で私の思い出深いG1について書くことになりました。懐かしい話も交えつつ、競馬の魅力をお伝えしたいと思います。

 私は高松宮記念を3勝【注1】しましたが、印象的なのはカレンチャンで勝った2012年です。この年は他にロードカナロア、ダッシャーゴーゴー、トウカイミステリーと管理馬を4頭出走させていました。カレンチャンは前年のスプリンターズSを勝っていたのに、まだG1を勝つ前だったカナロアに続く2番人気。「カナロアも走るけど、カレンチャンも強いのにな」と感じていましたね。

 レースはラスト100メートルで2番手にいたカレンチャン、好位のカナロア、ダッシャーの3頭が抜け出しました。ところが、ゴール前でサンカルロが一気に外から伸びてきたから驚きました。最後は「頑張れ!」だけでしたね。ゴール板を過ぎた時には勝利を確信しましたが、その後にG1で管理馬が3頭も掲示板に載っている【注2】のを見て、非常に誇らしい気持ちになったこともよく覚えています。

 翌2013年にカナロアで、2021年には、その産駒であるダノンスマッシュで勝たせてもらいました。うちの厩舎はよく「短距離王国」と言われましたが、実は騎手時代は忙しすぎる短距離があまり好きじゃなかったんです(笑い)。調教師になってからは素晴らしいスプリンターたちに巡り合えましたね。

 今年は道悪競馬になりそうで、ナムラクレアに注目しています。かなり馬場が悪かった昨年、うちの厩舎にいたアグリを外から勢いよくかわしていった脚が本当に強烈でした。道悪を全く苦にしない走りです。元々、重賞4勝の実績通り、スプリント適性は相当に高いですし、重い馬場が“追い風”になるはずです。

 ソーダズリングは、武豊騎手が6ハロン投入を進言したというのが気になるんですよ。私も騎手の意見は本当に参考になりましたから。あと、2連勝中で最近は発馬が安定してきたウインマーベルも挙げておきます。(JRA元調教師)

 【注1】3勝はG1に昇格した1996年以降の調教師別で単独最多。音無調教師、堀調教師、橋田元調教師の3人が2勝で続いている。

 【注2】1着カレンチャン〈2〉、3着ロードカナロア〈1〉、4着ダッシャーゴーゴー〈6〉、8着トウカイミステリー〈13〉。(円内数字は人気)

 ◆安田 隆行(やすだ・たかゆき)1953年3月5日、京都府生まれ。71歳。72年に騎手デビューし、91年にトウカイテイオーで皐月賞と日本ダービーを勝利。94年に引退。調教師に転身し95年に栗東で厩舎を開業。今月5日の定年引退までJRA通算967勝。重賞はG1・14勝(高松宮記念3勝)を含む59勝。海外G1は3勝(すべて香港スプリント)。安田翔伍調教師は次男。

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