◆第84回桜花賞・G1(4月7日、阪神・芝1600メートル)
今週開幕するクラシック、第84回桜花賞・G1(7日、阪神)に、イフェイオンで初参戦する杉山佳明調教師(40)=栗東=。開業4年目での新たな一歩は「原点」と「縁」が結んだ挑戦となる。
原点の地で大きな一歩を踏み出す。杉山佳調教師が競馬を知ったのは中学1年。阪神競馬場の近くに引っ越し、母と一緒に足を運ぶようになった。「松永幹夫騎手を格好いいなと思って、キョウエイマーチの桜花賞(97年)とかよく覚えています」。イフェイオンと臨む厩舎初のクラシック。懐かしい記憶がよみがえる。
深い縁を感じる。トレセンに入る前は約9年間、同馬を生産した社台ファームに勤務。当時は吉田照哉代表と米国のセリへ行ったり、社台RHの吉田哲哉代表とクロフネなどを育てた米国の育成施設で約3か月、研修も行った。牧場ではデュランダルやハーツクライなど一流馬にも騎乗。「最前線で仕事できて、いい経験をさせてもらいました」
人の縁は馬との縁も生んだ。開業した21年。体質面で競走馬になれるかどうかという社台ファーム生産馬を託された。その牝馬、コスタボニータは大事に育てられ、今では重賞で3度の3着に入るまでに成長。その姪(めい)にあたるのがイフェイオンだ。「そんな経緯で預けてもらったのかな、と。初めて見た時から随分とバランスのいい馬で、こういう馬で芝のクラシックに行けるんじゃないかなと思いました」。予感は現実に変わった。
開業から約160週。常に管理馬をいい状態で積極的に送り出すことを念頭に置き、今まで出走馬がいなかった週は一度もない。しかし、ただ使っているわけではない。「使って良くなる馬はどんどん使うし、ある程度格好がついたら狙っていきます」。メリハリの利いた起用を心がけている。
今回のイフェイオンはフェアリーSからの直行。牧場時代に手伝いへ行っていた宮城県の山元トレセンで大一番への英気を養った。「テンションなども考えて、一戦一戦、大事に消耗させない方がいいかな、と。そういう(社台ファームとの)ご縁の中でG1にトライできるのは幸せなことですね」。様々な思いを乗せ、恩返しとなる勝利を届ける。(山本 武志)