◆第91回日本ダービー・G1(5月26日、東京競馬場・芝2400メートル)
過去3勝の“神髄”仕上げだ―。第91回日本ダービー・G1(26日、東京競馬場)に向けた追い切りが22日、東西トレーニングセンターで行われ、皐月賞を制したジャスティンミラノが万全の動きで馬トクスタッフの評価も最高の「G」を獲得した。管理する栗東・友道康夫調教師(60)は現役最多3勝。無敗の2冠達成へ“友道流”の最終調整をヤマタケ(山本武志)記者が「見た」。枠順は23日に確定する。
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無駄な動きが全くない。ジャスティンミラノは直線を描くように滋賀・栗東トレーニングセンターの坂路を真っすぐ駆け上がった。200メートルごとに約1秒時計を詰めていく理想的な加速ラップを刻み、ラスト100メートル過ぎからは後方に豪快に蹴り上げるチップが推進力の証し。楽な手応えのままで800メートル54秒2―12秒1をマークした動きを、友道調教師は「皐月賞より走る姿がゆったりとしていたね」と満足そうにうなずいた。
頂点への道を知っている。3頭の先輩ダービー馬と同じように皐月賞後は在厩調整。「元気が良すぎて、プールも併用した」ドウデュースこそ坂路より距離の長いDPコースを多用した。しかし、今回はマカヒキやワグネリアンと同じく坂路とCWコースを併用。3週前に坂路で時計を出し、2週前と1週前はCWコースで徐々に負荷を強め、当週は坂路での微調整で仕上げた。まるでVTRを見ているような調教過程は、豊富な経験値の成せる業と言える。
1週前にしっかりと、レース週はソフトに―。すっかり定着した“友道流”は「今みたいにメリハリを利かせたかは別として」と前置きしながらも、02年の開業当初から意識してきた。すべてはフレッシュな状態で出すため。「レースの3日前にそんなに時計を出してもね。オリンピックの選手でも2、3日で突然変わらないでしょ」と友道師から冗談交じりに聞いたことがある。必要なのは派手な時計より日々の積み重ね。この中間もコース調教での前半は今までよりゆっくりと入り、我慢を利かせるなど、長距離仕様は意識している。
3頭の先輩たちもできなかった無敗で、しかも2冠への挑戦。最終追い切りを見届けた友道師は言葉に力を込めた。「いい位置を取れるという点では3頭より優れている。心配なくきているので、何とか取りたいですよね」。勝つには理由がある。経験という土台がある緻密な調整過程に、ダービー3勝の神髄が詰め込まれている。(山本 武志)
◆ジャスティンミラノが勝つと
▽無敗の2冠馬 20年コントレイル(3冠馬)以来、史上8頭目。
▽友道調教師 22年ドウデュース以来となる4勝目。現役最多で歴代2位(1位は尾形藤吉元調教師の8勝)。
▽戸崎騎手 10度目の挑戦で初勝利。
◆戸崎騎手に聞く
―皐月賞を振り返って。
「ひと言で『強かったな』と改めて思っています。中山2000メートルへの対応に不安な部分はあったが、ものともせずにいいパフォーマンスで勝ってくれたなという印象です」
―東京の2400メートルは?
「もともと東京の方が走りやすいと思っていて、距離はやったことがないとはいえ、乗った感じからも2400メートルは全く心配ない。ダービーへ向けて無事に馬も人もゲートインできることを祈っています」
―ダービーへの思いを。
「一番勝ちたいレースなので、このようなチャンスは逃したくない気持ち。2冠を目指せるのはこの馬だけですし、僕自身もダービーを勝ったことがないので、勝ちたい気持ちは強い。一人ではなく、(ジャスティンミラノの調教パートナーを務め、落馬事故で4月10日に亡くなった藤岡)康太と一緒に戦っている思いです」