【安田隆行・元調教師コラムG1帝王学】息子・翔伍師の負担かけない調教 かからない強みあるダービー馬

ダノンデサイル
ダノンデサイル

 私は現役時代、あまり菊花賞とは縁がありませんでした。特に調教師時代は97年のパルスビート(9着)1頭のみです。ただ、当時は開業3年目。大舞台に管理馬を送り出すというだけで、胸が弾んだことを覚えています。

 今年はこのレースがずっと楽しみでした。息子の翔伍調教師が管理するダノンデサイルが2冠を目指すからです。私が調教師としては取れなかった日本ダービーを勝った時は現地で驚き、感動しましたが、レース後の早い時期から1本で調整していくという話を翔伍調教師から聞きました。暑い時期に無理はさせたくない、と。今回は予定通りのローテと言えます。

 栗東で1週前追い切りも見てきましたが、ゆったりとしたフットワークなのに、想像以上に時計が速いんですよね(CWコース6ハロン78秒1)。騎乗した横山典騎手からも「すごく感触がよかった」と聞きました。日本ダービーの時も同じように話を聞いて、当時はトーンが今一つだったんですが、今回は明らかに違いました。

 この舞台で大切なのは折り合いです。スタート直後が下り坂ですから、いかにかからずに位置を取れるかが大きなカギ。ダノンデサイルは今までレースでかかったことがないのは大きな強みです。普段から調教をつける翔伍調教師は私の厩舎で助手をしている時から馬に負担をかけないように、攻め込まないように乗っていたと思います。その点もデサイルに生きているんじゃないですかね。枠もいいところに入りましたし、強いダービー馬の走りに期待したい。

 相手は混戦ですが、実績よりも状態面や適性などを重視しました。ピースワンデュックは1週前追い切りが非常に良く見え、連勝中の勢いを感じさせました。アーバンシックはダノンデサイルに春は2度先着されていますが、前走のセントライト記念が強かった。ヘデントールとアドマイヤテラは長い距離でのレース内容がよく、舞台適性という点で侮れない存在です。

 この4頭はジョッキーも大きな魅力。先ほども書いたように長丁場は人馬のコンタクトが非常に大切なレースです。経験豊富な名手たちの存在は非常に頼もしく感じられます。(JRA元調教師)

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