◆第167回天皇賞(春)・G1(4月30日、京都競馬場・芝3200メートル)
どこで見たかも覚えていないのに、一番詳しくなった天皇賞・春。それがマンハッタンカフェの2002年だ。その年は入社2年目でサッカー担当。日韓W杯の開幕直前だったこともあり、目が回るような忙しさ。膨大な仕事に追われて趣味の競馬をじっくり検討する余裕などなかった。
時はたち、競馬担当となってスポーツ報知評論家の小島太元調教師から当時の話を聞く機会に恵まれた。そのなかで意外であり、印象的だったのが「あんなにプレッシャーがかかったレースは他になかった」という回想だ。
マンハッタンカフェは01年に菊花賞、有馬記念を連勝した。「長距離G1は全部ものにしてやる。そのぐらいの決意があった」。ところが、大誤算だったのは前哨戦の日経賞(6着)。「周囲から天皇賞へ向けての叩き台だったのでは?と言われたけど、馬は昨年よりもたくましくなっていたし、仕上がりも満足いくものだった」だけにショックは大きかった。
本番での巻き返しに向け、輸送で馬体が減る対策として3週前から栗東トレセン入り。1週前、最終追い切りは主戦の蛯名騎手(現調教師)とともに栗東に乗り込んで、完璧な状態に仕上げた。負けるわけがない自信と、負けられない重圧。両極端の感情で挑んだ大一番を終えた直後の心境を、「うれしかったというより、ホッとした」と懐かしそうに振り返った。(西山 智昭)