◆第75回阪神ジュベナイルフィリーズ・G1(12月10日、阪神競馬場・芝1600メートル、良)
第75回阪神ジュベナイルフィリーズ・G1は10日、阪神競馬場で行われ、3番人気のアスコリピチェーノ(北村宏)が直線で力強く伸び、1分32秒6のレースレコードでG1初勝利を飾った。無傷3連勝で2歳女王に輝いたダイワメジャー産駒が、来春の牝馬クラシックのヒロインに名乗りを上げた。2着に5番人気のステレンボッシュ(ルメール)、3着に2番人気のコラソンビート(横山武)が続いた。
圧倒的な強さと速さで、2歳女王の座に就いた。アスコリピチェーノは直線で外に誘導されると、パワフルな末脚を存分に発揮。まずは馬体を併せにきた3着のコラソンビートを振り切り、内を突いてステレンボッシュ(2着)が強襲してくるとまたひと伸び。首差でしのぎ、レースレコードの1分32秒6で駆け抜けた。エスコートした北村宏は「追い出してから、いい伸びでした。ごちゃつくところもあったけど、馬が冷静に走ってくれた」とパートナーに感謝した。
新馬、新潟2歳Sに続き、無傷3連勝で手にしたG1タイトル。初めての右回りでも道中はリズム良く追走し、最後まで勢いよく伸びてセンスの良さを存分に見せつけた。開業12年目で待望のG1初制覇となった黒岩調教師は「長所は長くいい脚を使うところ。直線で前に出てくれたので、大丈夫だろうと思った」と冷静に勝利の瞬間を迎えた。
この中間は栗東滞在でハードな仕上げが施された。2歳牝馬離れした精神力で初めての環境にも全く動じず、最高のコンディションでG1の舞台へ。黒岩師は「ずっと落ち着きがあって、もっとすごい子なんだと思って、強い調教を課してきた。それに応えてたくましくなった」と愛馬を信頼して計算し尽くした調整過程で結果を出し、胸を張った。
来春の大目標は同じ舞台で行われる桜花賞・G1(4月7日、阪神)だ。北村宏は「少しずつステップアップしているが、まだ変わりそうなのがいいところですね」と大きな期待。さらにスケールアップし、桜の季節も主役としての走りを見せる。(山下 優)
アスコリピチェーノ 父ダイワメジャー、母アスコルティ(父デインヒルダンサー)。美浦・黒岩陽一厩舎所属の牝2歳。北海道安平町・ノーザンファームの生産。通算3戦3勝。総獲得賞金は1億493万6000円。重賞2勝目。主な勝ち鞍は23年新潟2歳S・G3。馬主は(有)サンデーレーシング。馬名の意味は「イタリアの都市名」。
北村宏「スタンドを正面にして、いい景色だなと思いました」
25年目の大ベテラン北村宏が、久々のG1タイトルに酔いしれた。キタサンブラックで制した15年の菊花賞以来、8年ぶりとなるG14勝目。大歓声を受け、北村宏は「スタンドを正面にして、いい景色だなと思いました。馬のおかげです」と相棒をほめたたえ、検量室前では馬の首筋を両側からなでていた。
19年3月に落馬負傷で5か月の戦線離脱をし、その年は自己最低の20勝に終わった。18年の関屋記念(プリモシーン)から重賞を勝っていなかったが、今年の新潟2歳Sをアスコリピチェーノで制し、長いトンネルを脱出。それから阪神JFで今年の重賞4勝目と、若手に負けじと存在感を見せ続けている。「これからも馬も僕も応援していただけたら」と意気込み、きっかけを与えてくれたヒロインとともに来春の大舞台へと向かう。