◆第75回朝日杯FS・G1(12月17日、阪神・芝1600メートル、良)
第75回朝日杯FS・G1は17日、阪神競馬場で行われ、1番人気のジャンタルマンタルが無傷の3連勝で2歳マイル王者に輝いた。インから早めに先頭に立ち、後続を振り切る強い勝ちっぷり。騎乗した川田、管理する高野調教師が口をそろえて能力、素質とともに「性格がいい」と絶賛する優等生が、次世代スター一番手の実力を証明した。
力が違った。ジャンタルマンタルは直線に入ってすぐ先頭へ。大迫力の末脚で坂を駆け上がった。猛追するライバルに影すら踏ませず、1馬身1/4差で完勝。無傷の3連勝で2歳王者に輝いた。初騎乗の川田が「最後までしっかりした脚を使っていましたし、順当に勝ってくれたと思います」と納得の表情を浮かべるほどの勝ちっぷりだった。
内ラチ沿いの7番手から、4角にかけて進出。前が開くと瞬時に抜け出した。「少し早めに動く形にはなりましたけど、ここが勝負どころだなと思いました」。完璧なエスコートに、4角4番手からラスト3ハロン3位となる34秒8を繰り出した。川田は「この馬の能力を信じてゴールまで連れて行きさえすれば、もう負けることはないだろうと、自信を持ちながら乗っていました」とたたえた。
川田がまたがったのは最終追い切りとこの日だけ。それでも「性格がいいのはとても大きいですし、持っているポテンシャルが非常に高いのも間違いない。これからさらに成長を伴える馬」と評価。今年、リバティアイランドの牝馬3冠などG1・5勝の名手に、ここまで言わせる大物だ。
高野調教師も「いたって従順で、馬房では人なつこい。乗っていても、イライラしたりパニックになったりすることが少ない。それでいて心臓が強い」と賛辞が止まらなかった。自身は牡馬でG1初制覇。「意識していません」と冷静だったが、“牝馬の高野厩舎”というイメージを、これ以上ない形で塗り替えた。
レースぶりも完璧なら、性格も最高というまさに“優等生”。この後は宮城・山元トレーニングセンターへ放牧に出される。次走は未定だが、これまでの重賞2勝がマイルで、クラシックに向けては距離延長が課題。指揮官は「もう少し距離を延ばしても上手に走れるように、厩舎としては取り組んでいくべき」と決意を新たにした。それでも川田が「G1を勝ちましたが、これから先ますます楽しみな馬」と期待するように、可能性は無限大。来春の主役として、高らかに名乗りを上げた。(水納 愛美)
◆ジャンタルマンタル 父パレスマリス、母インディアマントゥアナ(父ウィルバーン)。栗東・高野友和厩舎所属の牡2歳。北海道千歳市の社台ファームの生産。通算3戦3勝。総獲得賞金は1億1681万円。重賞2勝目。主な勝ち鞍は23年デイリー杯2歳S・G2。馬主は(有)社台レースホース。
〈父パレスマリス来年から日本供用〉
〇…ジャンタルマンタルの父パレスマリスは、今回が産駒のJRA・G1に初出走で初勝利。重賞も同馬のデイリー杯2歳S以来の今年2勝目、通算2勝目。13年ベルモントS(ダート2400メートル)など米G1・2勝し、種牡馬入り。初年度からストラクターでBCジュヴェナイルターフ・G1を制すなど活躍馬を送り出している。24年からダーレー・ジャパンが日本で供用する予定。