◆第68回有馬記念・G1(12月24日、中山競馬場・芝2500メートル)
今秋のG1を多角的に分析してきた「考察」も有馬記念は特別版です。この秋は馬トクYouTubeの展望動画にレギュラー出演した山下優記者と角田晨記者が担当となり、1週間を密着取材。土曜日には新たに「展開」を加え、レース当日の日曜日に自信の本命を導き出します。
10年から競馬を見始めた私にとって、最初のスターは名牝ブエナビスタだった。ひたむきな走りでどんな展開でも上位に来るG1・6勝馬が史上最強馬だと信じ切っていた。しかし、その思いは一頭の3歳馬によってすぐに覆される。11年の3冠馬、オルフェーヴルだ。皐月賞の圧倒的な走りに衝撃を受けて以来、私は国内外問わず出走するG1のほとんどを現地で観戦。偉大な足取りを肌で感じてきた。今でも最強馬という思いに変わりはない。
レース後に騎手を振り落とすなど栗毛の暴君とも言われたオルフェーヴルと、優等生なブエナビスタ。対照的な両雄の最初で最後の対戦が11年の有馬記念だった。3冠達成で勢いに乗る前者が単勝2・2倍で、これがラストランの後者が単勝3・2倍。完全な2強ムードで、多くのファンがマッチレースになるだろうと想像して、望んでいた。
しかし、結果はオルフェーヴルがスローペースも関係なく、一気に差し切る圧勝劇。後方から上がり33秒3の脚を繰り出し、歴戦の古馬を完封した。一方、ブエナビスタは本来の闘志が鳴りを潜めた走りで力なく馬群に沈み、国内で初めて掲示板を外す7着。レース後に雪が降り出した中山で、世代交代を象徴するかのような光景に胸が熱くなったのを覚えている。
当時と同じように次代の主役になる可能性を秘めた3歳馬はダービー馬のタスティエーラだ。今まで最も強かったのは2着とはいえ、ハイペースの先行策で踏ん張った皐月賞だと思う。報知杯弥生賞Vも含め、中山は間違いなく得意な舞台だ。先週の1週前追い切りの動きも申し分ない。古馬を相手に、どんなレースを見せてくれるのか楽しみにしている。(角田 晨)