◆第71回日経新春杯・G2(1月14日、京都競馬場・芝2400メートル、良)
2重賞が14日に行われ、第71回日経新春杯・G2(京都)はブローザホーンが1番人気に応え快勝。2月末に定年を迎える中野栄治調教師は約4年半ぶりの重賞タイトルとなった。
名伯楽は勝負どころを“予知”していた。来月末に定年引退を控える中野調教師にとっての大一番。ブローザホーンの手綱を託す菅原明にこう告げていた。「ハーツコンチェルトを目標にせこく乗らず、馬の力を信じて自信を持って乗ってくれ」
前半5ハロン58秒3の激流を中団から追走。直線手前の下り坂から加速を促すと、目の前にはサトノグランツと叩き合うハーツコンチェルトの姿があった。菅原明は全身で自信を乗せるように手綱を押し、末脚を絞り出す。最後は内から忍び寄るサヴォーナをねじ伏せるようにグイッとひと伸び。「前2頭がいい目標になり、ついていきながら『どれだけ走ってくれるか』と半信半疑なところもありながらでしたが、よく走ってくれました」と1馬身差の完勝をたたえた。
中野師はレースを関東で見守った。引き揚げてきたブローザホーンの手綱を引っ張っていたのは息子で担当の中野翔助手。「感動しましたね。母も電話で泣いていました」。こう話したように、家族の思いが一つになり、解散間近につかんだ約4年半ぶりの重賞タイトルだったが、込み上げてくる思いの理由はそれだけではなかった。
同舞台で行われた前走の京都大賞典は心房細動で競走中止。挫折からの復活Vに懐かしい記憶がよみがえった。「(ブローザホーンの)お母さん(オートクレール)も(17年の)ヴィクトリアマイルで心房細動になってその後の初戦で勝ちました。母子ってすごい」と笑みを浮かべながら明かしたドラマがあった。
重賞初制覇を果たした同馬の今後は未定。次戦は自らの手元を離れる可能性もあるが、中野師は力強く言い切る。「大きいところを勝つべき馬で勝ててうれしい。馬はまだまだ良くなる」。様々な絆が重なり合い、冬の淀に大きな一勝が刻まれた。(山本 武志)
◆ブローザホーン 父エピファネイア、母オートクレール(父デュランダル)。美浦・中野栄治厩舎所属の牡5歳。北海道新ひだか町・岡田スタツドの生産。通算18戦6勝。総獲得賞金は1億5641万3000円。重賞初勝利。馬主は岡田牧雄氏。