【こちら日高支局です・古谷剛彦】イクイノックスの血統は日本競馬発展の象徴

お披露目されたイクイノックス
お披露目されたイクイノックス

 種付け、出産シーズンが始まる2月に入り、主要スタリオンでは種牡馬展示会が行われる。6日は社台スタリオンステーションで、社台スタリオンパレード2024」が開催された(招待制)。今年からスタッドインしたイクイノックス、シュネルマイスター、グレナディアガーズの3頭に始まり、けい養種牡馬のうち29頭が展示された。

 イクイノックスが最初に登場。現役時に管理していた木村哲也調教師は「23年の秋2戦は、世界ナンバー1の称号にふさわしいパフォーマンスだったと評価していただけるのではと思います。ゲートを元気良く飛び出して好位に取りつくスピード、騎手の動作に従順な操作性、そして世界一美しいフットワーク、そして並みいる強豪を瞬間的に突き放していく瞬発力とスタミナ…。これ以上何を望むものがあろうかと言うぐらいのパフォーマンスだったと自負しています」と絶賛。さらに「最後の直線でいざ追い出そうとした瞬間、イクイノックスの瞬発力とパワーに、ルメール騎手は一瞬、体が置いていかれたそうです。それぐらい、その動きに彼自身は驚いたとおっしゃっていました」というエピソードを話した。脚元や病気などの疾患は一度もなかったという点も、木村調教師は強調していた。

 母系をさかのぼれば、5代血統表の中にアレッジド、ダンシングブレーヴ、トニービンと凱旋門賞馬が3頭。父系はサンデーサイレンスからつながるひ孫世代の種牡馬であり、父キタサンブラックの母系はサクラユタカオーから受け継がれるスピード豊かなメイド・イン・ジャパン配合。社台スタリオンステーションの徳武英介場長が「日本の生産界が、今日から次のステージに進み始めたと思います」と話していた。G1勝ちのない祖父ブラックタイドから父キタサンブラックが日本の中長距離界の頂点に立ち、さらにその子が世界一となる。このような形でサイアーラインが伸びていることが、まさに日本の競馬界の発展と言える。

 そして、21年NHKマイルCを制したシュネルマイスターが登場。手塚貴久調教師が駆け付け「ベストパフォーマンスと言われると、昨年の毎日王冠。3着に敗れましたが、ラスト100メートルの瞬発力は20年以上も調教師をしてきた中で初めて見たような末脚で、持っているポテンシャルを再認識しました。5歳まで駆け抜け、脚元などを含め健康な状態で生産界に戻すことができたことは非常にありがたいと思っています」と、生産者にアピールしていた。ドイツ屈指の名牝系とされるSライン(母名の頭文字がSで連なる牝系)で、シュネルマイスターの3代母であるザルデ(Salde)は、サロミナの祖母でもあり、サリオスと同牝系である。父キングマンは、14年に愛2000ギニーなどマイルG1・4連勝を飾り、14年全欧年度代表馬に輝いた。キングマンの祖母がダンシングブレーヴ産駒という点から、キングヘイローの血が入っている繁殖牝馬との配合は、絶妙なクロスも起きる。

 そして、20年朝日杯FSをレコードで優勝したグレナディアガーズが、新種牡馬のトリを飾った。中内田調教師は「父フランケルはもちろん、母ウェイヴェルアベニューがBCフィリー&メアスプリントを優勝しており、種牡馬候補として生を受けた馬だと感じていました。2歳で活躍した上に、古馬になってもトップパフォーマンスを見せていたように、心身ともに成長していました。早い時期から結果を出すことが求められる、現状の日本の競馬スタイルに合うと思っています」と、グレナディアガーズをPRした。フランケル産駒は今年、ウエストオーバーとアダイヤーが日本で種牡馬となり、国内での後継が増えつつある。その中で、モズアスコットに次ぐ国内マイルG1馬の実績を引っさげて種牡馬入りしたグレナディアガーズへの期待も大きい。個人的に、柔軟な歩きに魅力を感じるとともに、シュネルマイスター同様にあらゆる配合が可能な血統背景と150万円(受胎条件)と、種付料はリーズナブルに設定された。来週以降も、種牡馬展示会レポートをお届けする。(競馬ライター)

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