◆第41回フェブラリーS・G1(2月18日、東京・ダート1600メートル、良)
24年最初のJRA・G1、第41回フェブラリーSは18日、東京競馬場で行われ、11番人気のペプチドナイル(藤岡佑)が、超ハイペースから押し切りG1初制覇。管理する武英智調教師(43)=栗東=にとっても初のビッグタイトル。戦前から大混戦とされていたように上位人気は総崩れで、3連単は153万円を超え、レース史上最高配当となった。
大混戦の下馬評を象徴するように、前半からレース史上2度目となる3ハロン33秒台の超ハイペースに。4番手の外めを追走したペプチドナイルは、藤岡佑が「あまりにも良かった」と振り返る手応え通り、直線残り200メートルで先頭に立ち後続を振り切った。18年NHKマイルC以来2度目のG1タイトルとなった鞍上は「前回は僅差でガッツポーズできなかったんですけど、今回はできてうれしかったです」と声を弾ませた。
同じ前半3ハロン33秒台となった00年は、1着(ウイングアロー)から3着まで全て4角10番手以下の追い込み決着。当日は良馬場ながら雨があり、芝は稍重と時計が出やすい状態だった。今年はウシュバテソーロ、レモンポップ不在のなか、11番人気で“新砂王”となったが、他の先行馬は総崩れ。武英調教師の「自信がありました」の言葉通り、フロックではない強さだった。
トレーナーにとっては、騎手時代を含めて25年目で初のG1タイトルに「長かったですね」と万感の思いがあふれた。タイトルを手にしたからだけではない。「(沼川一彦)オーナーには20年前からお世話になっていて、つらいときにも支えていただきました。普段は声を出さないんですけど、今回はどうしても勝ちたくて無我夢中で叫んでいました」。深い絆で結ばれたペプチドの馬だからこその感激だった。
鞍上とも気心の知れた仲だ。「ジョッキー時代から仲が良くて、厩舎の初勝利も佑介ですから、縁をすごく感じますね。さらに生意気になるんだろうなと思います」とおどければ、藤岡佑も「『よくやったな』って言ってやりたいです」。開業から7年目。最高の結果をつかみ、さわやかな笑顔を見せた。
ペプチドナイルを次に待つのは、不在だった2頭をはじめ強豪との直接対決だ。鞍上は「レースをするごとにパフォーマンスを上げているし、秋に向けてまた力をつけていってほしい」ときっぱり。群雄割拠のダート界からますます目が離せない。(角田 晨)
◆ペプチドナイル 父キングカメハメハ、母クイーンオリーブ(父マンハッタンカフェ)。栗東・武英智厩舎所属の牡6歳。北海道浦河町・杵臼牧場の生産。通算20戦8勝。総獲得賞金は2億6259万6000円。重賞初勝利。馬主は沼川一彦氏。