通算2636勝 涙の騎手引退から1年 “馬ファースト”掲げる新人調教師4つの流儀 

騎手引退から1年、いよいよ厩舎開業を迎える福永調教師(カメラ・高橋 由二)
騎手引退から1年、いよいよ厩舎開業を迎える福永調教師(カメラ・高橋 由二)
厩舎の理想に「馬ファースト」をかかげる福永調教師
厩舎の理想に「馬ファースト」をかかげる福永調教師

 今週6日、8人の調教師が開業を迎える。注目は3冠馬コントレイルなど名馬の手綱を執り、JRA通算2636勝を挙げた福永祐一調教師(47)。昨年2月の騎手引退後、開業に向けて準備を進めたなかで強くなった思い「馬ファースト」「3年で結果を」「騎手育成」「相馬眼」の“4本柱”を語った。(取材・構成=山本武志、戸田和彦、水納愛美)

 第2の人生がいよいよ動き出す。涙の騎手引退から約1年。福永調教師は騎手として多くの大舞台で脚光を浴びてきたが、厩舎としての理想に“馬ファースト”を掲げた。

 「すべてを馬のために最優先に考えられる厩舎でありたい。(自分が)どのレースを勝ちたいというのはない。その馬にとって、ベストの結果を導けるようにしたいなというだけです」

 騎手では27年間でJRA2636勝。G1は海外、地方合わせて45勝を挙げた。当然、その経験は大きな武器になる。

 「短距離、長距離、芝、ダート、海外でもG1経験がある。いい馬がどういう馬かというのを知っていること。これが一番の強みです。またがれば、100%とは言わないけど、高い確率で適性を見抜くことができていたし、騎手のスキルも分かるから、どの馬にどの騎手を乗せるかというマッチングに関して優位性はあるかなと思う」

 開業後も調教に騎乗し、馬上の感覚を生かしていく方針だ。一方で、自らの弱みも理解している。

 「騎手あがりの調教師で経験が少ないのは馬の管理能力だと思う。それはちょっと意識していて、結果的に重賞やG1馬を担当していたスタッフばかり。若い子の方が体力はあるけど、それより技術、経験、馬の管理能力がある厩務員さんに来て欲しかったです」

 人馬ともに過ごしやすい環境を整えるため、設備投資は惜しまなかった。

 「多分1・5倍ぐらいは他厩舎よりお金がかかっていると思う。例えば治療機械は高額だけど、馬のためなら『じゃあ入れて』となる。うちは(馬房の)ウッドチップ、寝わらも無制限。自分はふかふかの布団で寝てて、馬のおかげで生活していて、そこをケチるのもね(笑い)」

 幅広い人脈も騎手生活で築いた大きな財産。コントレイルの手綱を任されたノースヒルズの前田幸治代表からはその3冠馬を父に持ち、セレクトセールで5億2000万円の値がついたコンヴィクション2の23(牡)を「開業祝い」で託された。

 「ジョッキーからお付き合いのある馬主さんばかりで、自分の人間性なども理解してくれている方なので、まだ何も実績ないけど任せてくれている。期待に応えたいという思いはあります」

 「天才」と言われた福永洋一さんの息子として、注目を集めた騎手デビューから28年。今は騎手全盛期からの調教師転身に、熱い視線が集まっている。

 「多分、普通は5年ぐらいでめどが立って、というプランでやっていくと思うけど、自分の場合は注目度が高いし、3年ぐらいの短いスパンで結果を出さないといけないのかなとは思ってます。まぁ、ジョッキー時代もそうだったからね」

 気負いはない。自然体を貫き、新たな道で再びトップを目指す。

 馬だけではなく、人も育てたい。確固たる地位を築いた元騎手として、思うことがある。

 「個人的というよりは、競馬界の責務だと思っています。スタージョッキーを作らないといけないというのは。豊さん(武豊)も50歳を超えているし、いつまでもおんぶに抱っこじゃだめだと思う。ああいう存在感があるジョッキーは持って生まれた華であるとか、難しいところはあるけど。それだけの可能性を感じる子供で、縁があるならば育ててみたいという気持ちはあります」

 もちろん、今は厩舎を軌道に乗せることに全力を注ぐが、将来の夢は胸に秘めている。ただ…。

 「一番可能性を感じるのは俺の息子。顔がいい。父子3代リーディングなんてうちだけやもん、権利あるのは。競馬に興味持つかは知らんけど」

 4歳になる長男の話題には笑顔で、親としての優しい顔をのぞかせていた。

 充実の1年を過ごしてきた。騎手引退後、技術調教師として様々な経験を積んできた。

 「楽しいですよ。しんどいと思ったことは一回もないかな」

 まず、重きを置いたのは牧場。大手や外厩の役割を担う近郊牧場だけでなく、日高や静内などの馬産地も巡った。

 「騎手時代にそんなに行くことがなかったから。コミュニケーションを構築していけるかはすごく重要と思っていました」

 競りも大事な仕事。セレクトセールなど国内だけでなく、ノースヒルズの前田代表に米国のセールに3度行かせてもらった。積極的に足を運び、相馬眼を磨いてきた。

 「色々な調教師に話を聞いて、重要視しているポイントが違ったりして、それがすごく参考になりました。これからもずっと続けていかないといけない。高い素質を持っている馬をどれだけ早い段階で見抜いて、ちゃんと買ってもらえるか重要ですからね」

 その合間にトレセンで調教に騎乗し、今年に入ってからは東西の数厩舎で研修も行った。着々と準備を整え、万全を期しての船出となる。

 ◆福永 祐一(ふくなが・ゆういち) 1976年12月9日、滋賀県生まれ。父は1970年から9年連続でリーディングを獲得した元騎手の福永洋一さん。96年3月に騎手デビュー。初騎乗初勝利を挙げる。99年の桜花賞(プリモディーネ)でG1初制覇。11年、13年にリーディング。JRA通算で重賞160勝を含む歴代4位の2636勝。昨年2月、サウジアラビアのリヤドダートスプリント(リメイク)を最後に騎手を引退した。妻の松尾翠さんは元フジテレビのアナウンサー。子供は1男2女。

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