◆第68回大阪杯・G1(3月31日、阪神・芝2000メートル)
春のG1シリーズ第2戦、第68回大阪杯は31日、阪神・芝2000メートルで行われる。ベラジオオペラの林田祥来オーナー(57)は、JRAで3頭目に所有した同馬が重賞を2勝するという強運の持ち主だ。馬主になって8年目。“地元”園田競馬への深い愛とともに、3度目のG1挑戦への思いを語った。
林田オーナーにとっても、ベラジオオペラにとっても大阪杯は3度目のG1挑戦となる。
「勝つに越したことはないですが、昨年の日本ダービー馬タスティエーラと、皐月賞馬ソールオリエンスも出てくる。約1年たって逆転できるのか、その差がどこまで詰まっているのか。そこが楽しみですね」
馬主になるきっかけは「サトノ」の冠名で数々の活躍馬を所有する里見治氏への憧れだった。17年に「地方ならそれほど費用はかからない」と部下に勧められ、兵庫県馬主協会に入会。21年2月にベラジオエガオンでJRA初出走(13着)し、同年にベラジオプライドもデビューした。だが、ともに未勝利で園田に移籍。そんな時、千葉サラブレッドセールで出会ったのがオペラだった。
「赤字ばかりになってしまっていたので、正直オペラが走らなければ、中央競馬の馬主をやめようと思っていました。ただ、上村先生(洋行調教師)は、僕に何とか中央の1勝をプレゼントしようと尽力していただいていました。セリには高いイメージしかありませんでしたが『上村先生にも恩返しになるのではないか』と考え、思い切って購入しました」
落札額は4410万円。どこに魅力を感じて購入を決めたのか。
「格好いいことを言いたいのですが、感覚しかありません。コロナ禍でネットでの参加。追い切り動画でいい感じだなとは思いましたが、実物も見られていませんでしたし、きょうだいも結果が出ていなかった。まさかこんなに活躍してくれるとは思っていませんでした」
22年11月のデビューから3連勝でスプリングSを制覇。自身も上村調教師もJRA重賞初勝利だった。
「地方でも重賞を勝つのは“持っている人”だと聞いていましたし、まさか中央で…。本当に夢見心地でしたが、一方でちょっと怖いなと。自分を見失わないように心がけていました」
皐月賞10着、日本ダービー4着。菊花賞への挑戦こそ断念したが、12月のチャレンジCで重賞2勝目を飾った。今年初戦の京都記念は2着に終わったが、G1でも戦える能力は示してきている。
「もしG1を勝てたら、今まで見たことがないような景色を見られると思います。ただ『また高い馬を買わないといけない』という怖さもあります(苦笑い)」
大阪で生まれ育った林田オーナー。兵庫で6勝を挙げるベラジオソノダラブの馬名からも分かるように、隣県・兵庫の園田競馬への愛は深い。
「地元と捉えています。企業としても大阪を中心に育ててもらいましたので、可能な限りスポーツ関係や慈善活動などで恩返ししてきました。地元を愛するのは世の常だと思っています」
XやYouTubeの「ベラジオちゃんねる」でも愛馬たちの活躍を積極的に発信している。
「生産牧場やファンの方から『盛り上げてくれてありがとう』、『楽しませてくれてありがとう』とメッセージをいただくのは、むちゃくちゃうれしいですね」
馬主になって8年目。林田オーナーが、JRAのG1制覇という大きな夢をつかもうとしている。(戸田 和彦)
◆林田 祥来(はやしだ・しょうらい)1966年4月4日、大阪府生まれ。57歳。大学卒業後は銀行員、外資系生命保険会社に勤務し、2000年に家業だった前身の「弁天センター」を引き継ぎ社名を「ベラジオ」に変更。現在は大阪を中心に、パチンコ店21店舗を展開する企業に成長させた。10年に社長を退任し現在は取締役。地方競馬で馬主として数頭所有するビープロジェクトの取締役も務める。JRAの現役馬は3頭。地方競馬では大井、門別でも所有している。