◆第84回桜花賞・G1(4月7日、阪神・芝1600メートル、良)
第84回桜花賞は7日、阪神競馬場の芝1600メートルで行われ、2番人気のステレンボッシュが、この週から短期免許で騎乗するジョアン・モレイラ騎手(40)=ブラジル=を背にG1初制覇。1番人気の2歳女王アスコリピチェーノを押さえ、昨年の阪神JFの雪辱を果たした。国枝栄調教師は3冠牝馬となったアパパネ、アーモンドアイに続く現役最多の同レース3勝目。今後の牝馬3冠ロードへ、2頭と同様の手応えを明かした。1~5着馬までにオークス(5月19日、東京)の優先出走権が与えられた。
満開の桜が咲き誇った仁川の直線。「マジックマン」の異名を取る鞍上に導かれ、ステレンボッシュが華麗なフットワークで駆け抜けた。勝利の瞬間、右拳を握ったモレイラは、その後も何度も天に向かって突き上げた。「手応えが良くて、直線は素晴らしい脚を見せてくれた。余裕があって強い勝ち方ができた」と満足そうにほほ笑んだ。
完璧なレース運びだった。「ゲート裏でリラックスできていたし、ベストのパフォーマンスが出せると自信がついた」。スタートはやや立ち遅れたが、すぐさま中団後方のポジションを確保。「注目馬が周りにいたし、前走で負けた馬も近くにいた」。阪神JFで後れを取ったアスコリピチェーノをぴたりとマークする形で、直線を向くとエンジン全開。馬場の真ん中から力強く抜け出し、残り150メートルで先頭に立ちそのまま押し切る“横綱相撲”。「残り500メートルでは素晴らしい反応だったし、そのハイスピードを長いスパンで続けられる。距離が延びても問題ないし、非常に楽しみ」と賛辞を惜しまなかった。
陣営の“工夫”も奏功した。今回も阪神JFと同じく栗東滞在で調整。だが、前回は車通りの多い厩舎で車のライトに反応。ストレスがかかっていたそうだが、今回は違う棟を選択。「判断は良かったと思う」と田村助手。比較的、静かな馬房で過ごせたことも好結果につながった。
牝馬3冠の初戦を制覇。勝ち時計の1分32秒2は、昨年のリバティアイランドと0秒1差の優秀なタイムだ。「1つ目を勝ったので、その次、その次と夢見ていきたいなと思います」と今後を見据えた国枝調教師。管理したアーモンドアイ、アパパネで2度の牝馬3冠を達成している名伯楽。「2頭と比べても、手応えを感じる部分では同等のものがある」とその能力を高く評価する。偉大な先輩の背中を追い、ステレンボッシュが牝馬3冠ロードの主役になる。(戸田 和彦)
◆ステレンボッシュ 父エピファネイア、母ブルークランズ(父ルーラーシップ)。美浦・国枝栄厩舎所属の牝3歳。北海道安平町・ノーザンファームの生産。通算5戦3勝。総獲得賞金は2億1546万8000円。重賞初勝利。馬主は吉田勝己氏。