【ヴィクトリアM】父ルーラーシップを調教 開業4年目の調教師が娘マスクトディーヴァとのGⅠ初制覇にかける思い

マスクトディーヴァでG1初制覇を狙う辻野調教師(カメラ・朝田 秀司)
マスクトディーヴァでG1初制覇を狙う辻野調教師(カメラ・朝田 秀司)

◆第19回ヴィクトリアマイル・G1(5月12日、東京・芝1600メートル)

 古馬牝馬のマイル女王を決める第19回ヴィクトリアマイル・G1(12日、東京)で、開業4年目の辻野泰之調教師(42)=栗東=がマスクトディーヴァで人馬ともにG1初制覇を目指す。助手として修業を積んだ角居勝彦厩舎の所属時に携わったルーラーシップの娘に、勝負の仕上げを施す。

 辻野調教師が、重賞2勝のマスクトディーヴァと初めてのG1取りに挑む。愛馬を初めて見たのは1歳の夏。“これから”の馬だと認識した。

 「とにかくきゃしゃで、頼りないという印象を受けました」

 父は12年の香港・クイーンエリザベス2世C制覇など、国内外で活躍したルーラーシップ。辻野師が角居厩舎(21年2月に勇退解散)で助手を務めていた当時、調教に携わる機会があった。

 「乗っていたのはデビュー前で、馬場の1本目の追い切りも乗りました。その時点で『これは絶対走るな』と感じたぐらい。すごくフットワークの柔らかい、全身バネのような馬でした。(父と比べると)マスクは、頼りなさが残ってるなと強く感じましたね」

 その印象を覆したのが、昨年のローズSだった。芝1800メートルの日本レコードを0秒8も更新し、重賞初制覇を果たした。

 「僕らがびっくりしました。トライアルのG2でメンバーもそろう中で『勝てます』と言えるだけの完成度かと言われると、そうではなかったので」

 決してピークが早まったわけではない。4歳になっても、想像以上の成長曲線を描いている。

 「ここで成長が止まったら嫌だな、という気持ちはありましたが、いい意味で裏切ってくれました。メリハリがついて、馬体重以上にバランスの取れた体。パッと見て『いい馬』と言えるようになりました」

 4歳初戦は、今回と同舞台の東京新聞杯を選んだが、痛恨の出遅れで6着。前走の阪神牝馬Sは一転して好位から抜け出し、流し気味で快勝した。

 「東京新聞杯でやりたかった競馬をしてくれました。作りこんだ状態ではなかったですが、余裕を持った勝ち方。五分にスタートを切れば、いい位置で競馬ができる。収穫の多いレースでした」

 開業4年目。これまでG1には18回挑戦し、2度の2着がある。

 「もう一歩のところまで来られてるなと感じていますが、実際勝てていないので。何かが足りなかったかな、と考えるようになりました」

 G1タイトルに向け、意気込みもひとしおだ。

 「時計どうのこうのは問題ありません。上がり勝負になっても、速い脚を使えます。何とか、取らせてあげられたらと思います」

 週末の決戦へ、万全の仕上げで送り出して勝負をかける。(水納 愛美)

 ◆辻野 泰之(つじの・やすゆき)1981年8月29日、大阪府まれ。42歳。06年から栗東・角居勝彦厩舎で調教助手を務める。20年に調教師免許を取得し、21年3月に開業。同年の関屋記念・G3(ロータスランド)で重賞初制覇を果たした。JRA通算84勝、うち重賞7勝。G1は延べ18回の出走で、22年高松宮記念(ロータスランド)、23年秋華賞(マスクトディーヴァ)の2着2回がある。

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