地方競馬ですでに2歳戦がスタートしている話題は、先週のコラムでお伝えした。そのなかで、1日に門別競馬場で行われた3Rのフレッシュチャンレジ(新馬)で、レッドベルジュール産駒のウィルオレオール(牡2歳、北海道・小国厩舎)が鮮やかに差し切り、新種牡馬の産駒最初に勝ち名乗りを上げた。
レッドベルジュールは、2019年デイリー杯2歳Sを制し、重賞初制覇を飾った。キャリア3戦がすべて2歳戦と、未知の魅力を感じさせる状況で、2020年秋にアロースタッドで種牡馬生活を送ることとなった。兄弟には1つ下のレッドベルオーブが2020年デイリー杯2歳Sを制覇。レッドベルアーム、レッドベルローズ、レッドベルディエスの3頭は重賞入着馬と優れたファミリー。ディープインパクト×アンブライドルズソングの配合は、コントレイルと同じ。コントレイルが3冠馬となった年のスタッドインに、種牡馬としての可能性に懸ける思いはあっただろう。
初年度産駒は17頭、2世代目は9頭の血統登録と、決して恵まれた状況とは言えない。しかし、最初の出走馬が、ハイレベルのホッカイドウ競馬でデビュー勝ちを収めたことは、馬産地での注目度は高まる。しかも、ウィルオレオールが破った相手は、能検初日に2番目に速い走破時計をマークしたハーフブルーだったことを考えると、価値は高い。
初年度産駒が少ない種牡馬と言えば、昨年はゴールデンバローズがいる9頭の産駒から4頭が勝ち上がり、岩手競馬2歳最優秀馬に輝いたフジユージーン(牡3歳、岩手・瀬戸幸厩舎)を筆頭に、JRAで勝利を収めたエフエイト(牡3歳、栗東・北出厩舎)もいる。5日盛岡11Rで行われた、岩手3冠初戦となるダイヤモンドカップで、フジユージーンが楽々逃げ切り、無傷の7連勝を飾った。2着オオイチョウ(牡3歳、北海道・小国)もゴールデンバローズ産駒で、東京ダービー指定競走となり、東日本交流として行われた最初の年に、ゴールデンバローズ産駒が強烈なインパクトを与えた。
G1勝ちのないブラックタイドからキタサンブラックが誕生し、イクイノックスへと父系を伸ばそうとしている。実績的に乏しいと思われる種牡馬は、決して繁殖牝馬に恵まれない状況なので、成功は非常に難しい。そのなかで、地方競馬とはいえ3冠の1つで産駒がワンツーを決めたり、世代最初の勝ち馬を送り出す種牡馬が、同じ週に話題となったことはうれしい限りだ。(競馬ライター)