◆第65回宝塚記念・G1(6月23日、京都競馬場・芝2200メートル)
春のG1シリーズを締めくくるグランプリ、第65回宝塚記念は、ディープインパクトが勝った06年以来となる京都競馬場で行われる。ドウデュースにとっては初舞台だが、同レース単独最多4勝を誇る武豊騎手(55)=栗東・フリー=はむしろ歓迎し、過去に4頭いる主要4場でのG1制覇をターゲットに定めた。史上17頭目の有馬記念とのダブルグランプリ制覇も懸かる一戦で、ファン投票1位の支持に「応えたい」と意気込んでいる。
逆襲の時が来た。ドバイ・ターフで5着に敗れたドウデュースが、宝塚記念で反撃を期す。「ドバイが悔しいレースだったんで、決めたいですね」と武豊。目に炎を燃やし、自らを奮い立たせた。
22年凱旋門賞(19着)は本調子に遠く、昨年のドバイ・ターフは左前肢ハ行で出走取消。ドウデュースが、初めて不安なく迎えた海外レースが前走だった。しかし出遅れ気味で、終始内で締められる形。やっと進路が空いた頃には、上位2頭が既に外から伸びていた。末脚は息を潜めたまま敗退。武豊は「状態が良かっただけに残念」と無念の表情を浮かべていた。
レジェンドが「現役で最強のパートナー」とほれ込む一頭。日本ダービーを勝つ前から「風格が古馬みたい」と評するほどだった。早熟だったわけではない。「筋肉量も増えたし、去年ぐらいからやっぱり、完成したかなという感じはする。精神的には若干波があったけど、今は落ち着いているね」。主戦だからこそ分かる進化を遂げている。
今年は、06年以来の京都開催。前回の覇者はディープインパクトだ。武豊は、18年の時を経て再びダービー馬と淀のグランプリに臨む。ドウデュースは本来の舞台である阪神・芝2200メートルでは、23年の京都記念を圧勝。今回は未経験の舞台だが「小回りよりはいい。阪神だと内回りになるしね。ドウデュースにとってはいいんじゃないかな」と、京都開催を歓迎した。
さらに名手は、「ここをもし勝てば、4大場G1制覇ですからね」と記録も意識する。グレード制導入(84年)以降、東京、中山、阪神、京都でG1を勝ったのは4頭のみ。テイエムオペラオー、オルフェーヴル、ジェンティルドンナ、キタサンブラックと名馬が並ぶ。「そんな馬いないでしょ、なかなか。なかなかできないよ」。また今回は4年連続G1制覇もかかるが、両方を達成すれば史上初の偉業だ。
ファン投票では、歴代最多23万8367票を獲得して1位に選ばれた。「それに応えたいですよね」と、武豊の言葉にも自然と力がこもる。「(前走は)本来の力を出せなかった。今度こそ」。秋春グランプリ連覇で、現役最強の座を不動のものにする。(水納 愛美)
◆4年連続G1制覇 グレード制導入の1984年以降、JRA・G1(海外、地方交流除く)を4年連続で制したのは、メジロマックイーン(90~93年)、メジロドーベル(96~99年)、アグネスデジタル(00~03年)、ウオッカ(06~09年)、ブエナビスタ(08~11年)にゴールドシップ(12~15年)の6頭。直近のゴールドシップは3歳時に皐月賞、菊花賞、有馬記念を制し、4、5歳時に宝塚記念を連覇。6歳で天皇賞・春を勝った。今年5歳のドウデュースは朝日杯FS、日本ダービー、有馬記念と3年連続で勝っており、今年も勝てば、名馬たちと肩を並べることになる。
◆武豊の宝塚記念勝利 89年イナリワン、93年メジロマックイーン、97年マーベラスサンデー、06年ディープインパクトで歴代最多の4勝。89年は20歳2か月28日で、史上最年少勝利。今年のレース当日、武豊は55歳3か月8日で、勝てば蛯名正が16年(マリアライト)に記録した47歳3か月8日を更新して最年長勝利となる。なお、G1の最年長Vは、今年の日本ダービー(ダノンデサイル)を制した横山典の56歳3か月4日。
◆06年宝塚記念VTR 雨が降り稍重だった淀のターフをディープインパクトが4馬身差で圧勝し、G1・5勝目を挙げた。4角にかけて後方から位置を上げ、残り300メートル地点では2番手。他馬がスローモーションに見えるほどの末脚で、逃げていたバランスオブゲーム(3着)を悠々と抜き去った。武豊はゴール前でガッツポーズ。「(残り)600から上がっていって、あとは独走という説明のしようのないレースですね」とその強さに脱帽した。
◆京都開催の宝塚記念 宝塚記念は第1回の1960年から阪神を舞台に行われてきたが、改修工事や天災などにより過去に7度だけ京都で代替開催された(ほかに80年は中京・芝2400メートルで開催)。今年は阪神競馬場のスタンドのリフレッシュ工事のため。